日本唯一の隕石湖???
正直いって少々、懐疑的な気持ちだった。めぐってきた池は全国7千5百に迫ろうとしているが、いまだ日本でこれぞ隕石湖(クレーター湖)! というような池には出会えていない。ただ、誰も知らぬ深い山中で何百年も知られることなく、衛星写真にも写ることなく、巨樹に囲まれた低みに小さな隕石湖が青い水を湛えている、なんていうロマンはあながち夢でもないだろう。
そんなイメージにシンガハタの池はじつにぴったり符号する。できすぎなぐらいだ。名も魅力的。地元では伝説の「神十股の池」という別の名が伝わっている。いずれの名も惹きつけられる。
隕石湖に関心をもったのは、アニメ映画『君の名は。』の舞台の糸守湖について妄想検証をしてから。物語上の架空の湖だが設定では「1200年前の隕石湖」となっている。モデルとされるのは諏訪湖だが、現実の諏訪湖は隕石湖ではなく構造湖。
その際、隕石湖というのはなかなか条件が厳しいということを知った。どかんと穴が開けば一時的に水は溜まるかもしれないが、いろいろな条件が合致しないと長い時間、継続的に池の状態を保つことは難しいのだ。
宇宙研究者の調査も入ったシンガハタの池
そもそもシンガハタの池が隕石湖ではないかと知られるようになったのは、1991年の信州大学チームの調査報告からのようだ。水がたまっていないので隕石湖ではないが、同じ長野県の御池への登山道駐車場横に国内で最初に発見されたクレーター跡がある。シンガハタの池は国内で二例目、また、水を張っている点では、初の隕石湖といえようか。
宇宙の不思議について著作もある山賀 進氏のウェブサイトには以下の顛末が記されている。
信州大学チームは、この池は約3000年前に直径2.5mの隕石が衝突した跡といっているようです。1991年5月3日毎日新聞の記事参照。同記事には「池の誕生は今から三千年ほど前。この付近の基盤岩は流紋岩類で、通常では起こり得ない衝撃により地下約二十メートルがえぐられていた。また、地滑りや浸食などの地形とも考えられず、池の底に礫(れき)岩層があることや、断面構造、形状などがアメリカのアリゾナ隕石孔の特徴と一致することなどから、「隕石孔と判断せざるをえない」(酒井教授)という。落下した隕石は直径約二・五メートルと見られ、地表に激突、砕け散ったらしい。」とあります。1991年3月3日の読売新聞の記事にもあります。そこには伝説の池なのでそっとしておいて欲しいという村民の声もあります。
なお、2006年10月17日、日本スペースガード協会の坪根秀一氏、州崎保司氏、内藤直人氏が現地調査を行い、その報告(池まで降りて間近に撮影した写真を含む、ただしいん石の採集はできなかったそうです)がスペースガード協会の機関誌ASTEROID2007年Vol.16(通算58号)に載っています。この記事によると、カーブミラーのところから池に下りる道ができていたとのことです。
(山賀進ウェブサイトより引用)
地形と空撮写真
土砂崩れによる堰き止め湖の可能性は?
稜線下や山頂の肩にたたずむ不思議な立地の池は、日本中の山を探すと、じつはぽつぽつ存在する。
火口湖のように頂上部にピンポイントで穴を穿つことができるなら別だが、立地についてはアットランダムの隕石湖の場合、降雨量の多い日本では流水による堆砂、浸食の影響を考えれば、生成時のきれいな円形を長年にわたって維持する方が不自然だ。
逆に隕石湖は円形という先入観は捨てた方がいい? それはもしかしたら、すごく普通の池の顔をして、ひっそり出自を隠しているのかもしれない。と、またロマンに走ってしまった。
シンガハタの池へのアプローチ
王滝ダム湖のインレット側に水交園の駐車場および公衆トイレがある。ナビを設定するなら、まずここが分かりやすい。ここからならシンガハタの池までまっすぐ一本。池までは少々、距離はあるが全舗装でクルマでも進める。一部、荒れている箇所もあるものの酷道というほどでもない。
沢を渡る橋を越えたら近いので注意して進む。
左側路肩に未舗装の1〜2台の駐車スペースがあり、小さな看板があるが、見落としやすいので注意。ここから池までは30mほど歩くが、訪れたときはヤブ漕ぎ状態。ビショビショになった。
鳥瞰図
Googleマップ
マークした場所は駐車スペース1〜2台。「シンガハタの池」の案内標識があり、ヤブ漕ぎながらアプローチ路がある。