【しんがはたのいけ / 神十股の池】
- 日本唯一の隕石湖?!
- 宇宙研究者の調査も入ったシンガハタの池
- 日本初のクレーター発見者・坂本正夫氏も独自調査?!
- 空撮して地形を考察
- 堰き止め湖や地すべり断層湖の可能性は?
- 伝説からの考察。「神十股池」という池名の謎(作成中)
- シンガハタの池へのアクセス
- クレーター湖の可能性がある全国の池
- マップ

日本唯一の隕石湖?!
池のそばには「シンガハタの池(いん石湖)」と記された道標が立っており、地元では隕石湖(クレーター湖)として認知されている。
それでも少々、懐疑的な気持ちだった。全国1万2千以上の津々浦々の池に会ってきたもの、いまだこれぞ隕石湖(クレーター湖)! というような池には出会えていない。
誰も知らぬ深い山中で何百年も知られることなく、巨樹に囲まれた低みに小さな隕石湖が青い水を湛えている・・なんてロマンはもはや夢だろう。人が見逃してきた小さな湖面も、何万枚もの航空写真からAIがあっという間に解析できる時代。それだけにシンガハタの池は日本における隕石湖の最後の可能性かもしれない。
「日本唯一のクレーター湖」にシンガハタの池はじつにぴったり符号する。できすぎなぐらい。池の名も魅力的。地元では伝説の「神十股の池」という別の名が伝わっている。いずれの名も惹きつけられる。
隕石湖に関心をもったのは、アニメ映画『君の名は。』の舞台の糸守湖について妄想検証をしてから。物語上の架空の湖だが設定では「1200年前の隕石湖」となっている。モデルとされるのは諏訪湖だが、現実の諏訪湖は隕石湖ではなく構造湖。
その際、隕石湖というのはなかなか条件が厳しいということを知った。どかんと穴が開けば一時的に水は溜まるかもしれないが、いろいろな条件が合致しないと長い時間、継続的に池の状態を保つことは難しいのだ。
また仮に正真正銘の隕石湖であったとしても、隕石湖ですというためには世界で学術的に認められる必要があり、そのハードルをシンガハタの池は越えられていない。

宇宙研究者の調査も入ったシンガハタの池
そもそもシンガハタの池が隕石湖ではないかと知られるようになったのは、1991年の信州大学チームの調査報告からのようだ。水がたまっていないので隕石湖ではないが、同じ長野県の御池への登山道駐車場横に国内で最初に発見され国際的に認定されたクレーター跡がある。シンガハタの池は国内で二例目、また、水を張っている点では、初の隕石湖となる可能性を持っている。
宇宙の不思議について著作もある山賀 進氏のウェブサイトには以下の顛末が記されている。
信州大学チームは、この池は約3000年前に直径2.5mの隕石が衝突した跡といっているようです。1991年5月3日毎日新聞の記事参照。同記事には「池の誕生は今から三千年ほど前。この付近の基盤岩は流紋岩類で、通常では起こり得ない衝撃により地下約二十メートルがえぐられていた。また、地滑りや浸食などの地形とも考えられず、池の底に礫(れき)岩層があることや、断面構造、形状などがアメリカのアリゾナ隕石孔の特徴と一致することなどから、「隕石孔と判断せざるをえない」(酒井教授)という。落下した隕石は直径約二・五メートルと見られ、地表に激突、砕け散ったらしい。」とあります。1991年3月3日の読売新聞の記事にもあります。そこには伝説の池なのでそっとしておいて欲しいという村民の声もあります。
なお、2006年10月17日、日本スペースガード協会の坪根秀一氏、州崎保司氏、内藤直人氏が現地調査を行い、その報告(池まで降りて間近に撮影した写真を含む、ただしいん石の採集はできなかったそうです)がスペースガード協会の機関誌ASTEROID2007年Vol.16(通算58号)に載っています。この記事によると、カーブミラーのところから池に下りる道ができていたとのことです。
(山賀進ウェブサイトより引用)

日本初のクレーター発見者・坂本正夫氏も独自調査?!
長野県の「御池クレーター」の学術論文発表によって日本初のインパクトクレーターの発見者となった坂本正夫氏も、なんとシンガハタの池の独自調査を行なっていたと、ご本人からうかがうことができた。(2023年)
「独自で調査して資料収集した結果では、インパクトクレーターの可能性があります。円形の形状、盛り上がった縁、池の断面などからインパクトである可能性があると思います」
クレーター発見者である坂本氏の「可能性がある」という言葉に胸が熱くなった。一方、坂本氏はこうも付け加えている。
「しかし、こうした小さな池(地形)は隕石そのものが見つからない限り、インパクトであることを証明する材料は無いと思います。その隕石の破片を探すことは至難の業といえます。また、御岳山の裾野にあることから単発の噴火に関係した現象(ガス小噴火、水蒸気主小爆発など)で説明も可能です。いずれにしても、サイズが小さいほど仮説を立証することが困難になります」
インパクトクレーターの特定において衝突爆発後に降り積もるフォールバック層が有力な手がかりになるが、フォールバック層が形成されるためには数百メートル、数キロ四方を吹き飛ばすような巨大爆発が必要で、シンガハタの池は規模が小さすぎるということのようだ。
空撮して地形を考察
白巣峠の直下にある天狗の庭
シンガハタの池の周辺地形を俯瞰すると、長野と岐阜の県境をなす白巣峠の直下にある天狗の庭のようなくぼ地にシンガハタの池がある。画面左手にあるこんもりした稜線の左側が白巣峠。岐阜県側はダートで長年、通行止めになっている。


シンガハタの池の北側斜面
シンガハタの池の北側斜面。左下隅に見えるのが池。下側中央には沢をまたぐ橋が見える。この沢は谷となって折れ曲がりながら山を駆け上っている。立地的に、沢からこの池への流れ込み、あるいは流れ出しはなさそうで、水源となるような明確な沢も見あたらない。

白巣峠を中心に沢とシンガハタの池の位置関係
池は中央右寄り。沢にはさまれていることや鞍部の稜線直下にあることから集水面積は小さい。大雨のときも池を越流するような流れは起きにくく、流出河川が見えない状態になっているように思える。それにしても魅力的な地形だ。

シンガハタの池周辺のパノラマ空撮
地形的な新たな気づきがないかと、2025年10月に白巣峠側からのパノラマ空撮を行った。下の写真では手前側が岐阜県側。下端中央左寄りが白巣峠。その少し上にシンガハタの池が見える。このアングルから見ると、地すべり、土砂崩れによって池が生まれたようには見えない。池の唐突感がきわだつ。どっちかというと谷側方向へリム(外輪)があるような変な感じ。

2019年のシンガハタの池
峠側から接近してみると、手前(峠)に向かって湿原が形成され、流れ込みの様相を呈しているのが見てとれる。

2025年のシンガハタの池
抽水植物が岩石の岸の一部を覆い始めている。



池底には無数の足跡?
同じ動物(人間?)の足跡のようにも見えるが、執拗に何かを探しているかのような痕跡。しかし人間にしては小さく刻むような一定さが不気味。水鳥? 宇宙人?

岸の形状の拡大

堰き止め湖や地すべり断層湖の可能性は?
流出および流入する沢がない
稜線下や山頂の肩にたたずむ不思議な立地の池は、日本中の山を探すと、じつはぽつぽつ存在する。
火口湖のように頂上部にピンポイントで穴を穿つことができるなら別だが、立地についてはアットランダムの隕石湖の場合、降雨量の多い日本では流水による堆砂、浸食の影響を考えれば、生成時のきれいな円形を長年にわたって維持する方が不自然だ。
逆に隕石湖は円形という先入観は捨てた方がいい? それはもしかしたら、すごく普通の池の顔をして、ひっそり出自を隠しているのかもしれない。と、またロマンに走ってしまった。

土砂崩れによる堰き止めも微妙?
2019年の空撮写真から検討した結果、土砂崩れによる堰き止め湖の可能性もあるのでは? と一度は思ったが、2025年の別アングルからの空撮では、谷側と池との間にある細長いリム状の盛り上がりを土砂崩れでできたと見るのはちょっと不自然かなあと・・正直、分からなくなった。
やっぱ、この池、おもしろい!

伝説からの考察。「神十股池」という池名の謎(作成中)
「シンガハタ」という池名はきわめてユニークで、また奇妙である。「神十股」は「神ヶ股」の誤記の可能性はないか? 地形を表す言葉の可能性は? 神の十の股? 全国的に見て類似の地名は?
この池をとりあげた当時の新聞記事では「シンガハタまたはシンナマタ」(読売新聞)、「シンガハタ」(毎日新聞)と表記され、漢字表記なし。これは地元、王滝の村誌でも同様だったとテイルケープ氏からおしえていただいた。
とりあえず「神」が付く全国の数百に及ぶ地名から、気になるものを下に抽出してみたが、今のところピンと来るものはなかった。「股」の方は全国30余の地名があったが、こちらも手がかりは見つからず、やや手詰まり感。地元の古老への聞き取りが必要か。
- 神家町 (じんかまち) 富山県
- 神々廻 (ししば) 千葉県
- 神船町 (しぶねちょう) 長崎県
- 神木 (しぼく) 神奈川県
- 神戸 (じんご) 岡山県
- 神田 (じんだ) 群馬県(他地域で「じんで」「じんでん」も)
- 神通 (じんづう) 富山県・和歌山県
- 神沢 (しんのさわ) 秋田県
- 神場 (じんば) 静岡県
- 神山 (じんやま) 広島県
- 神呪町 (かんのうちょう) 兵庫県
- 神庭 (かんば) 岡山県
- 神庭町 (かんばちょう) 島根県
- 神稲 (くましろ) 長野県
- 神水 (くわみず) 熊本県
- 神合町 (こうあいまち) 熊本県
- 神下 (こうか) 奈良県
- 神指町 (こうざしまち) 福島県
- 神足 (こうたり) 京都府
- 神海 (こうみ) 岐阜県
- 神目中 (こうめなか) 岡山県
- 神山 (こやま) 大阪府
- 四神田 (しこうだ) 三重県
シンガハタの池へのアクセス
駐車場・トイレ拠点
王滝ダム湖のインレット側に水交園の駐車場および公衆トイレがある。ナビを設定するなら、まずここが分かりやすい。

アクセス路は舗装林道
拠点からシンガハタの池わきまで林道一本で直通。少々、距離はあるが全舗装でクルマでも進める。一部、荒れている箇所もあるものの酷道というほどでもない。
※2025年10月の再訪では通行止めの掲示があったものの、シンガハタの池まで行くことができた。

沢をまたぐ橋を越えたらゆっくり
沢を渡る橋を越えたら池は近いので注意して進む。
ほどなく左側路肩に未舗装の1〜2台の駐車スペースがあり、小さな看板があるが、見落としやすい。

あとはヤブ漕ぎで池畔まで
ここから池までは30mほど下って歩くことになるが、訪れたときはヤブ漕ぎ状態。ビショビショになった。



マップ
池さんぽマップ

ニッポン湖沼図鑑マップ
300年後の日本でも隕石湖ロマンが忘れられないように、「ニッポン湖沼図鑑」にもシンガハタの池を掲載しようと思う。地形はなるべく正確に描いた。

Googleマップ
マークした場所は駐車スペース1〜2台。「シンガハタの池」の案内標識があり、ヤブ漕ぎながらアプローチ路がある。