水辺遍路

訪れた全国1万1,100の池やダムを独自の視点で紹介

大沼の浮島(山形県朝日)

【おおぬまのうきしま / 出羽の大沼 / 浮島大沼】

国の名勝にもなった山岳信仰の天然湖沼

ため池100選に選定されている馬神池を左に見ながら県道112に導かれ、朝日連峰の長大な西麓を上っていく。途中、断崖の厳しい渓谷に身が固まる思いがしたものの、標高を見ればたかだか300mそこら。日本海からも太平洋からも遠い列島の中心近くという立地だけに不思議な感じである。
この県道の終点に小さな集落があり、国の名勝「大沼の浮島」を示す道しるべがあった。
指示に従い枝道を500mほど上るとどん詰まりに浮島稲荷神社の未舗装駐車場。大沼に会いにきたのに、神社の駐車場に駐車していいかなと迷いもしたが、大沼は飛鳥時代に修験者によって見そめられ、早くも古代に開基された霊地。いわば沼そのものが御神体といえるだろう。沼を拝すること、すなわち参拝といってよいとか理屈をこねる必要もなく、駐車場の少し下には観光客用の立派な公衆トイレがあったりする。
神社の前を経て、登山道的な階段を数十メートル下ると沼が見えた。

数十センチの小さな浮き島にも、それぞれ名前が付けられている。そのひとつが岸にくっついていた。休憩中?

 

ミステリアスな動きで浮遊する浮き島たち

「大沼の浮島」は国名勝の正式な指定名である。浮き島の大沼ではなく大沼の浮き島というぐらい、浮き島が代名詞になっている。
沼にある幾多の浮き島は、時間とともに流れ、たゆたい、動きまわっているという。朝がたなど交差するような動きも見られるといい、メカニズムは解明されていないそうだ。また、その複雑な動きが吉凶を占う託宣のように珍重された時代もあった。
それでも沼の中央にある葦原島以外の大小60もの浮き島は、今は数えるほどになった。地元では浮き島の保存会が結成され活動している。
ふと対岸に動く異様なものが目に入った。白い。白い犬だ。しかも大きい。風が吹くたびに波紋がたつ水面の向こう側の岸で、大きな犬がひとりで歩いている。



 

浮島大沼の形態

成因は天然の堰き止め湖か

浮島稲荷神社の縁起に、今から1300年前の680年にここ浮島の神池を発見したとあるので、天然湖由来であろう。周辺の地形は丘陵で河岸は切り立っている。
下は川をはさんだ対岸側から見た大沼の立地。正面の丘陵の上に沼がある。

周囲長と水深

周囲長は765m、最大水深は3m。西岸側にアシ群落が発達し、浮き島の供給源となっている。(下写真)

古名に「出羽の大沼」

古来「出羽の大沼」と呼ばれ、源頼朝の祈願所となって以来、代々の土地の領主によって庇護帰依されてきた。



流れ込み

神社の対岸側に水源らしき沢があった。この沢は草に埋もれるようなかっこうの湧水口に御紙幣が立てられていた。


吐き出し

未確認。

ワンド

ワンド横から神社にかけて丘が岸にせり出している。


 

浮島大沼の設備

出島の鳥居

浮き島のようにも見えるものの、これはしっかりと底に足が付いた島。もしこれが浮き島だったら、すごかったのに。

浮島稲荷神社

参道

神社から下り階段の参道を経て、鳥居杉ごしに大沼が見えてくる。



御神木

沼のまわりには御神木が何本も。沼を一周すれば御神木めぐりにもなって運気アップ。


水上デッキ

大沼全体を見渡せる。

あずまや

石燈籠

半島部の先端に石燈籠と石製ベンチ。

湖畔の休憩所

写真展示も行われている。

沼の周回遊歩道

一部、アップダウンあり。ほか木道も。


案内板



駐車場

左は2022年、右は2016年。


公衆トイレ

ログハウス風。


 

閼伽沼(あかぬま)

閼伽沼と名付けられているが、実際には大沼のワンドの一部で、烏鵲橋(かささぎばし)によって区切られているだけ。名前や形状から水垢離の場だったのだろう。

烏鵲橋(かささぎばし)

七夕にまつわる因縁あり。



 

浮島大沼の動植物

魚影を確認したが魚種は特定できず。



 

アクセス

小さな門前集落があり、この看板の案内に従って進む。


 

Googleマップ

マークした場所に大沼観光客用の駐車場とトイレ。大沼までは浮島神社を経て徒歩5分ほど。