なたいけ。
百名山の雨飾山(1,963m)の山腹にたたずむ紅葉と新緑の名所・鎌池にお伴のように寄り添う小さな池であるが、天狗の沐浴場のようなたたずまいを前に、そっと目をつむり息を吸い込む。標高1,190m。
それにしても、隣りあう池の名が「鎌(かま)」と「鉈(なた)」。ともに農器具という対照があるが、個別にみると、カマ首という音、「鉈」と「蛇」の字の類似から想像できるように、この二つの天然湖の成立由来には蛇にまつわる伝説がある。
その話は鎌池のページに譲るとして、鎌池の駐車場から見るとちょうど対岸あたりだろうか、小さな道標が示す鉈池への分岐がある。一周2kmの鎌池を取り巻く遊歩道を、右回りでも左回りでもけっきょくいちばん奥まで歩くことになるので1kmほどの距離にあるが、その分岐から鉈池はあっけないほどすぐに着いた。
底質は砂地で全体的に浅く、セキショウモがところどころ群生し、心静まる。
水は青みがかって清澄だが、清冽とまではいかないのは、底に積もった落ち葉の腐食がもたらすプランクトンの営みか。10センチほどのフナ類の魚影も意外に濃い。
どうやらここの水は鎌池から流入しているようだ。顔立ちは湧水池だが、水源が湧水であればこうはいかない。鎌池からのおさがりの水ならではの滋味がある。
アクセス、駐車場などについては鎌池の項に記載。
マークした場所は駐車場。