
地理院地図にも記されたシーズナルレイク
正月が明けた早々の夜、室戸市街地の酒場。
その夜、テレビ番組「マツコの知らない世界」の取材で現地入りし、ディレクターとともに地元の人たちに聞き込みをしていた。みな、池の存在は知っていたものの、見たことはないと口をそろえて言う。タクシーの運転手さん、居酒屋のご主人、神社の宮司さんさえも。
この池に魅せられつつも、実際に会えるまでに25年を要したと言う人までいた。
そんな池山池とは、いったい、どんな池なのか。
雨後だけに現れるという伝説の山上湖「池山池」。
池山池の形態と景観
基本スペック
地理院地図に池名とともに水色の湛水面が記載されている。れっきとした池として公式に認知されているが、下記のデータは地図から読み取ったものに現地での調査を加味した。
正式名:池山池(地理院地図に名称記載)
所在地:高知県室戸市元
湖面標高:520m
周囲長:400m(満水時)
最大水深:1.5m(満水時の予測)
湖沼タイプ:稜線断層湖、シーズナルレイク
湖沼型:NA

立地
池山池は、室戸岬内陸の山間部、標高540m台のなだらかな山頂わきに立地。
湛水時の湖面標高は520mであり、ほぼ山頂の池といえる。
下のGoogleアースの画像の中央に「池山神社」としてマークアップされている地点が池山池。アングルは西側からで奥に海(紀伊水道)が見えている。
に、しても・・2024年2月に撮影したというGoogleアースの画像では、しっかり水面が写っているではないか。降雨の少ない冬場に水がたまっているというのは、雨後出現湖の常識からするとちょっと予想外。

池山池の構造
流入口と水源
ほぼ山頂の池で集水域は小さい。池山池よりも標高の高い北側(上のGoogleアース画像では池の奥側)には、池頭から谷筋が標高540m台の最高点に向かって130mほど、まっすぐのびている。ただ、この谷はその先で東側の急斜面を麓の室津川に向かっていっきに駆け下っている。下の空撮写真に詳しく記した。
なお、偶然にもこの空撮写真の撮影日は上のGoogleアースの撮影日のちょうど1年後の同じ月の2025年2月。やっぱり池に水がたまってる!
何でも2023年ごろから水が干上がらなくなったとの話。どんな理由があるのか。以前は水が抜ける穴の存在の可能性を疑っていたが、その穴が何かの理由で塞がったのだろうか。今後も引き続き、状況を追っていきたい。

流出口と流出河川
南側には下方へと下る三本の谷筋が認められ、流出口の可能性がある。
池を北東側から撮影した下の空撮写真では、三本の谷筋のうち両翼は池からの直接の流出の可能性があるが、中央の一本は画像で見る限りは候補からはずせそうに思った。
あとは現地で超満水時に、実際に流れ出しているところを抑えたいものだ。そのときは気合でゴムボートを担ぎ上げるしかない?

池下50mで水が湧き出す?(地元情報)
池が一番深くなっているあたりに、丸くそこだけ草が生えていない場所があった。湧水口なのか、逆に水が抜ける地下水脈への入口なのか、不思議な円形だった。
上の写真で右側の流出口候補は、その円の近くにある。その先の下側は急坂になっているが、50mほど下ったところに水が湧きだしているところがあるという地元の人からの話もあった。
伏流した池山池の水が湧き出している流出口として有力。

地形スケッチ
2019年に描いたもの。


池山池の地形(空撮)
2025年2月撮影。









池山池のディティール
神社の対岸側から見た池山池
2019年1月撮影。


神社側から見た池
神社は自然石の野面積みで護岸された中の島になっており、丸木橋が渡されている。

池山神社
麓では「池山さん」とも呼ばれている池山神社が池の中に浮かんでいる。

池山池の歴史と文化
鯨漁師の信仰を集めた山上湖
室戸で捕鯨が盛んだったころ、池山池に祀られている池山神社は鯨漁師たちの信仰を集めていたようだ。麓にも池山神社が分祀されているが、その宮司さんでさえ池そのものは見たことがないと言っていた。

池そのものが御神体? 大蛇の池伝説も
現れたり消えたりする池。池そのものが御神体と信じる人がいるのもうなずける。
大蛇にまつわる『池山物語』の伝説も室戸市史に掲載されている。この大蛇伝説では、刀(金属)に触れただけで逃げだす大蛇が登場するが、愛媛県の八釜の甌穴群では龍神を怒らせて雨を降らせるために金属を投げ入れたといった話もあり、金属を嫌がる池ヌシの伝説は新潟県の雨生ヶ池や山形県蔵王のドッコ沼にもある。

弘法大師「空海」との意外な関係
なんと池界のスーパースター弘法大師が「空海」という僧名を思いついた場所がこの室戸だそう。本名は佐伯真魚(さえき の まお)。死後に贈られた法名が弘法大師。
空海さんがこの池のことを知っていたかどうかは分からないが、池山池で調伏された大蛇が逃れた先が、かの空海自身が造成に携わった満濃池だったと聞けば何か因縁を感じる。
池山池の雨乞い参拝と、ご挨拶登山
池山池では古くから雨乞い参拝のほか、室戸の秋を彩る神祭り前にご挨拶登山も行われてきた。現在は春と秋の年に二回、地元有志らによって清掃活動を兼ねたお参りの伝統が守られている。

池山池へのアクセス
アクセス情報
公共交通
バス(安芸-ジオパーク線)の元橋バス停下車。
元川に沿って「元甲」の登山口まで舗装路を3.2km。徒歩40分。登山口から先は下のアタックレポート参照。軽登山の装備必要。
マイカー
元甲の登山口近くまで舗装路があるものの狭い道で私有地がある。観光地化されておらず駐車スペースの確保が難しいので、室戸の町のホテルや駐車場に駐車し、登山口まではタクシーやバス、徒歩、自転車の利用が無難。
下の写真は海の駅とろむ。ほか、道の駅キラメッセ室戸なども。


登山路とアクセスマップ
池山池への主ルートは室戸市街地のはずれにある元川沿いの道のどん詰まり近く、「元甲」にある最後の橋を渡った先にある登山口から池山池まで徒歩2時間半。登坂高度450m、直線距離で5kmほど。
距離的に最短なのは池の東側にある室津川沿いの河内集落からのルート。1時間ほどの登山で行けるという話だが、急登の荒れた獣道なので地元の人でもこのルートを使う人は少ない。
主ルートでも崩落などでルートが微妙なところで、しばしば変わるとのこと。GPSマップは事前にマップデータのダウンロードを忘れずに。

アタックレポート
2018年3月
オートバイを積載したハイエースで室津川沿いに進み、池山池へのとっかかり口を探す。当時はネットにも池山池の情報がまったくなかったので、関東在住の自分には、どこから手を付けてよいやら検討もつかず。
道のどん詰まりまで進むも、手がかりはつかめず、とりあえずは地形把握のため空撮。
周辺の四十寺山への登山案内板を撮影し撤収。






2019年1月
自力で行くのが難しいなあと思っていたところ、池をテーマにしたテレビ番組の取材先として池山池をゴリ押ししたら、何とオーケーが!
しかも現地でのロケハン中に、ありがたいことに池までガイドしてくれるご夫妻が現れ、もう感謝感激。とはいっても、いくら温暖な高知とはいえ、さすがに1月の登山は寒そう・・。おまけに当日は雨。






2025年2月
室津のサブルートを試すべく、軽四駆車で集落から先の林道をアタック。途中、車止めのロープで阻まれるも、高度を稼ぐため徒歩で進み空撮。
水をたたえた池山池の姿を捉えることに成功。
ほんとは神様の池を上から見下ろすのってよくないんだけど、池の調査のためお許しを。



マップ
ニッポン湖沼図鑑マップ


