水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

桃瀬の水牢(群馬県中之条)


拷問用の特殊な池「水牢」

江戸時代の藩政時代、沼田真田家の悪政下、あるいはそれ以前の治世下で使用された水牢と言い伝えられる池。
これは年貢の納入最終期限となる年末の極寒のなか、「水牢」と呼ばれる池の中に滞納者を立たせる「水責め」で拷問したとされる。見せしめの側面が強く、家族や親族が滞納分を借りようと奔走するあいだに低体温症で落命する者もいたという。
当時の藩内に他に七ヶ所の水牢があった。この桃瀬の水牢は田を見下ろす民家の鼻先にあり、集落からもアクセスしやすい通り沿い。いやおうにも人だかりができていれば、すぐ立ち寄って見物しやすい場所だけに、やはり見せしめの効果を高めるため計算された立地なのかなと思った。護岸に石積みが見られるが、船石は見えなかった。
現地の案内板には中之条町誌の以下の記述が記されている。

大きさは十二メートル四方で粗朶(そだ)をゆい、木戸を設け、周囲は石垣となっている。(略)水牢の底にある船底石という大きな一枚石の上に立たせた。滞納したものは妻子の泣き叫ぶ姿を見て庄屋や隣近所の人にすがり年貢を納めた