みたきだむ。
芦津渓谷の奥座敷に屹立する、ザ・ラスト・バットレスダム。
国内に現存する六基のバットレスダムのなかでも最後に建造され、2002年に土木遺産に選定された三滝ダム。
このダムの存在を知ったのは、2017年9月に放送されたNHKのネイチャー番組「ダーウィンが来た」のなかで、ダム上流側の森に生息するニホンモモンガが扱われたからだった。
標高730メートル。地図で見ると、ずいぶんと山奥である。そのときはロケ隊が入れるぐらいだからクルマでも行けるのかな、ぐらいのことしか考えなかったが、のちにそのダムこそ日本最後のバットレスダムと知った。
行程は全舗装で、身構えていたほど苛酷なものではなかったが、それでも狭隘な峠道が延々と長い。
ダム周囲は見学可能で、バットレスダムとしてはめずらしく堰体を歩いて渡ることもできる。
ダム湖では魚種は特定できなかったが、魚がつくる波紋が湖面のあちこちで朝日を返してはぜていた。残念ながらダム湖は釣りは禁止であるが、ここから上流の渓では地元漁協が駆除活動を行うほどにブラウントラウトが繁殖している。
漁業権が設定されており、釣りの対象魚はアマゴ、イワナ、アユ、鯉など。遊漁料は日券3500円と管理釣り場なみの値段で、ちょっとだけ竿を出してみたいというむきには厳しい。
ダムには上流下流の両側から遊歩道が通じている。上流側からの方が歩く距離は短かくて澄むものの、駐車スペースは一、二台分しかない。
下流側には広めの未舗装駐車場とトイレがあって安心感があるが、ダムまでは2km、高さにして80mほどを登り歩く。ただ、このルートはダム建設時に使われたと思われるトロッコ鉄道の廃線跡を通るので、往年の痕跡を探す楽しみもありそうだ。紅葉の素晴らしい芦津渓谷から、前触れもなく格子組みのコンクリート建造物が現れる驚きと喜びも代えがたい。
ダムサイトに立つと深い渓谷のせいか数値よりも大きく見える。谷底にむかって左右二門のゲートからスキージャンプ式の減勢工が、轟々と両側からはさみ打つ。ふり返れば、山の端からようやく頭をもたげたばかりの初冬の朝日が、なだれこむように湖面に鮮やかな紅葉を映しだした。
マークした場所は芦津渓谷の駐車場。