水辺遍路

訪れた全国1万1,450の池やダムを独自の視点で紹介

鬼怒沼(栃木県日光)

鬼怒川の水源。標高2千メートルの山上に48の池群

鬼怒川はわりと身近な川だったが、どこか神秘的な印象があった。その源流をはるかさかのぼった水源に、鬼怒の名を冠した山(鬼怒沼山・2,140m)と高層湿原(鬼怒沼)があると知ったのは、恥ずかしながら最近のことである。
標高2,030mに敷き込まれた泥炭層を穿つ大小の池塘を渡りつないで木道で歩くのは爽快碧空。四十八沼というが、古語での四十八はたくさんあることを意味している。実際には、その数は40とも250ともいわれ、その総称として「鬼怒沼」と呼ばれる。私が数えたら32だったので、かなり厳しめ?
紅葉は9月中旬から。チングルマ、ヒメシャクナゲ。
マイカー規制があるため、ゲート前の女夫渕無料駐車場(トイレあり)から鬼怒沼までは徒歩で往復16km、8時間半の長丁場となる。
日本の重要湿地500

 

鬼怒沼へのアクセスマップ(案内板・注意板)



 

鬼怒沼へのアクセス

登山口駐車場

奥鬼怒温泉に本当の登山口があるが、直線距離で4kmほどの区間がマイカー規制のため、温泉送迎車やタクシー以外は通行できない。
このため温泉旅館に泊まらずに鬼怒沼をめざす場合、規制ゲート手前にある女夫渕の無料駐車場でマイカーを停め長い道のりを自分の足で歩くことになる。
駐車場はけっこう広く舗装されていてトイレあり。快適だが秋口の夜に前泊したところ人生で経験したことのないほどのウンカの猛攻に閉口。
この駐車場は温泉旅館の送迎バスのバス停にもなっている。


一般車規制ゲート

この橋から先はマイカー規制。徒歩では入れる。
橋を渡ると右に歩行者専用路への入口がある。林道の方をそのまま歩いてもよいが距離が長い。
歩道の方は、ほぼ鬼怒川に沿って歩く。渓相は素晴らしく遊漁料を払えば釣りもできる。


コザ池下砂防ダム

堤高15mの砂防ダムあり。その名もコザ池下砂防ダム。支流の上にコザ池なるものがあるのかと思って地図をにらむも、「コザ池の滝」というのはあるけど「コザ池」が見あたらない。
コザ池方面からの沢との合流部には、イワナの魚影が濃い。水たまりみたいなところにもイワナがいた。




奥鬼怒温泉(ホントの登山口)

マイカー規制がなければ、ここが鬼怒沼への登山口となる。
クルマでも行けるところを、延々と歩いてきたわけだが、途中、猿の襲撃を受けそうになったり、いろいろ勉強にもなった。
この日は熊除けブザー全開である。これで猿軍団も撃退した。


異界への入口のよう

奥鬼怒温泉の中でも一番奥にある温泉宿の敷地のようなところが登山口。
味のある建物の下をくぐって登山道へ!
「千と千尋」を思い出させる異界への入口って感じでテンション↑。


砂防ダムを越え、滝を横目に

鬼怒川沿いから尾根の上に出る急登へ。途中、滝への分岐や休憩所も。
ニッコウイワナが放流されているらしい。釣り人に対し20cm以下はリリースせよとのこと。


 

鬼怒沼と四十八沼

冒頭の概要にも書いたが、鬼怒沼は鬼怒沼山火口原に、大型火口湖の痕跡として残った複数の沼、池塘の総称である。ある意味、ロストレイク(消失湖)ともいえる。
数が一致しないためか、すたれてきてはいるが「鬼怒沼四十八沼」という呼称もあったようだ。
名の付いている沼は18あると金沼の案内板に記されていた。うち、湿原入口の案内マップに記されていた名称の分かっている12の沼の内訳は以下。
食器沼、徳利沼など、身近な生活用品の名のものもある。形状に由来するものと思われるが、「食器」の言いまわしからすると比較的新しく名付けられたものもあるのではないかと思う。

  1. 金沼
  2. 銀沼
  3. イモリ沼
  4. 鶴沼
  5. ヒルモ沼
  6. 足洗沼
  7. 鏡沼
  8. 行水沼
  9. 釜沼
  10. 徳利沼
  11. 亀沼
  12. 食器沼

※順序はおおよその大きさ順

bunbun.hatenablog.com
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鬼怒沼周辺の地形

鬼怒沼山(2,140m)を外輪最高峰とするテーブルマウンテン。
頂上台地に泥炭層の高層湿原が広がり、複数の池塘を総称して鬼怒沼と呼ぶ。


金沼と鬼怒沼山


 

沼の形態・生物

沼をもつ高層湿原としては日本でもっとも高い

泥炭層をひたす池塘を伴う高層湿原として標高2,030mは、日本ではもっとも高い場所にあるもののひとつ。
池はオープンウォーターの比較的大きな金沼のようなものから、陸化の進んだもの、その中間的な浮き島を浮かべたものなど、おのおの表情が異なり、歩いているだけで高層湿原における沼の変遷史を目のあたりにする感がある。

水質・水位・水深

透明度はわりと高くやや褐色がかっているようにも見える。水位は安定していそう。
底に植物が生えている沼、浮き島のある沼、底が苔に覆われている沼などがあった。
水深はおおむね底が見える程度だが、金沼は1〜2mありそうだった。

沼の生物・植物

魚影のようなものが見られた池もあったが、特定はできていない。ミズスマシのような水生昆虫を見間違えた可能性もあるが、水面に小さな引き波を作って素早く移動する生き物がいた。
植物ではチングルマ、ヒメシャクナゲ。



 

鬼怒沼の池伝説

うっかりのぞき見すると怖ろしいタタリがあるという

昭和時代のアニメ「まんが日本昔ばなし」シリーズの中でも、視聴した子どもの心に深く恐怖の傷を刻印した「トラウマ回」として知られる。また、ほのかなエロティックさが少年期のトラウマを新たな次元に醸成するのか、「鬼怒沼の機織姫」で画像検索すると、思い思いに描かれた思い入れいっぱいの機織姫のイラストがぞくぞくと出てきた。

「鬼怒沼の機織姫」で画像検索すると・・

アニメ「まんが日本昔ばなし」動画

「鬼怒沼の機織姫」10分43秒


www.youtube.com


 

Googleマップ

マークした地点は金沼。