水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

木地山ダム(山形県長井)

きじやまだむ。
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ツキノワ熊の巣窟は、日本に13基しかない中空ダム。

長井市といえば2010年10月に市街地で熊による連続襲撃事件があった。周辺の自治体も含め、現在も熊の目撃情報は多いエリアである。気になるのは山間部ではなく、町中や道路上での目撃情報が多いこと。山形県が発表している今年のクマ目撃情報マップでも、多くが町中である。
鈴をつけてもかえって寄ってくるなどとも噂されるほど、近年、クマ対策は頭を悩ます。ラジオも山の中に入ると電波が悪く使いものにならないこともあり、2017年は大音量ホイッスルを導入した。どのぐらい効果があるのかは分からないが、クマは聴覚は鋭いので出会い頭の遭遇さえ避けられればと思っている。ただ、あまり吹き続けるとクマも慣れてしまって効果が薄くなるということなので加減が難しい。

長井市のクマ襲撃事件の事例をはじめ、人を恐れない「クマ2.0」とでもいうべき新しい生態のクマ事情については、田中洋美著『クマ問題を考える』がたいへん勉強になった。学習能力の高いクマたちは、現代人がいいカモであることに気づきはじめている。

クマ問題を考える 野生動物生息域拡大期のリテラシー (ヤマケイ新書)

クマ問題を考える 野生動物生息域拡大期のリテラシー (ヤマケイ新書)

木地山ダムへの道のりは、垂直な断崖絶壁に一刀彫りしたような隘路を、ガードレールもないまま進むスリル満天のルートだった。これほどビビった舗装道は、なかなかない。
ふだん鳥瞰図を描いているせいか、今、自分が走っている場所の状況を、つい俯瞰的に想像する癖がついているのだが、これがいけない。体がガチガチになっていうことをきかず、ふらっと崖の方に向かってしまう。
ひたすら道の行く先だけを見つめ、垂直に切れ落ちている道の外には目を向けないようにする。俯瞰的な想像もなし。
なるほど、近辺にある三淵渓谷は、卯の花姫の伝説の残る40mの懸崖がつづく神域の秘境で、下流のダムからボートツアーも出ているほどに、垂直懸崖が売りになっているわけである。
到着して驚いた。じつに立派なコンクリートダムだった。これだけのコンクリートを、あの道を通ってミキサー車や大型ダンプで運んだのだろうか。
一見するとふつうの重力式コンクリートダムに見えるが、やっぱりコンクリート運搬が大変だったのか、材料が少なくて済む中空重力式コンクリートダムという日本に13基しかないめずらしい型式を採用しているとのことである。

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