水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

はり湖池(京都府向日)

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五塚原古墳の丘陵に二段の溜め池があり、下段は「はり湖池」という名で釣り人でにぎわっていた。
京都の市街地の溜め池は排他的な池ばかりで、いささか気落ちしてきたところだったので、ようやくこういう池に会えてほっとしたのが正直なところである。並んだ釣り人の足もとを二尾の鯉がゆっくりと、おこぼれのエサにあずかろうと尾を動かしている。愛されている池というのは、やはりそれなりにいい表情をしている。
しかし、どうも様子がおかしい。

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堰体の上に設けられた遊歩道には背の高いフェンスが張りめぐらされているが、規制看板の中に釣り禁止を明示したものがあった。
「堤体保護の為」と理由が示されている。確かに釣り人が釣り台を据えているのはコンクリート補強されていない土の護岸。ただ、実際には釣り人によって土が踏み固められていたので、堤にとって致命的なダメージを与えているようにも見えなかった。


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田の畔のようなもろい堤の池では「堤体保護のため」も分かるが、年輩の釣り師に人気の池の場合、公園化する際に階段状護岸やデッキを設けるなどの配慮がなされる事例が全国的には多いだけに、ここには何か事情がありそうである。
堤の端まで行くと、さらに驚くべき光景が。
住宅地から池への入口にあたる場所に、神経衰弱に陥った魔除けの護符のごとく禁止看板が並んでいる。
看板設置は役所にとって地域の苦情に対する定番の対処法だけに、苦情があるたび看板が増えていったのだろう。埼玉の野池で見た、同じ禁止看板を1m置きに狂ったように並べ立てたのは怨念だが、こちらは地域の苦情が積み重なった地層のようだ。

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向日市のホームページを見ると、はり湖池について地域住民から寄せられた意見が掲載されていたが、釣り人を排除せよ、監視を強化すべきといった意見ばかり。ゾーニングやルールを明示して釣り公認にしては、という意見はなぜかなかった。釣り禁止はもはや京文化?
東京の池公園は釣りに関しては意外にゆるいところもあるが、妙な禁止項目も増えていて、ひとつの公園に40枚以上の禁止看板があるなんてところも。
はり湖池では、公園に駐車場がないことや、周辺の野池のほとんどが釣り禁止という環境が、キャパシティ以上の釣り人を集めてしまい、問題を大きくしてしまったように見える。
釣り師の多くはこれ以上の問題化を避けるため自転車やオートバイで来ているようだったが、見ている前で網を持った親子連れが駐車禁止の看板の前に車を停めた。なるほど、問題はなかなか根深そうである。
平仮名と漢字が混ざった「はり湖池」という名に特徴があり、個性を感じるが、釣りができる良池の既視感があった。なぜかと思ったら長野県に「針湖池」という池があった。野池では釣り禁止が多い長野にあって、なかなか希少な池だけに記憶に残っていた。

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公園部分
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堰体


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洪水吐


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取水設備


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上段の大池への上り口


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案内板