水辺遍路

訪れた全国1万1,100の池やダムを独自の視点で紹介

日向ダム(岩手県釜石)

【ひなただむ】
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三陸リアス側にはユニークな顔付きのダムが多い

数こそ多くはないものの、三陸リアス側に点在するダムたちは、画一的ではない個性的な顔付きをしたものが多くて楽しい。
釜石の町を洪水から守護する日向ダムは、新しいダムではトレンドにもなっているゲートレス構造の非常用洪水吐をはさんで、左右に石積みのようなデザインフィニッシュが施されている。
重力式コンクリートダムの面立ちのアクセントとなる鋼製ゲートを持たないダムは、得てしてのっぺりと無個性で合理的な顔付きになりがちであるが、日向ダムの場合は北九州や兵庫の土木遺産ダムのようなモルタルな風合いでコクがある。
これは「鉄の街・釜石」の歴史遺産である板野高炉跡の石積みをモチーフとしている。

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拙著「日本全国 池さんぽ」のp100-101

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よう見ると、けっこう凝っている

高欄部分には、まるで絵本で見るドラゴンのお城のような半円形の意匠が施されている。近づいてみないと分からないが、半円の切り欠けには「さざ波」をイメージしたという青銅色の手すりが嵌め込まれていて、かわいらしい。
六門の非常用洪水吐から下り落ちる導水部分は整流板を持たず、左右の石積デザイン部分と連続面をなしている。増水時に水が流れ落ちる姿はさぞかし妖艶なことだろう。
堰体の下腹部中央に設けられた一門の常用洪水吐のスリットだけがやけに無機質にいさぎよく、フェティッシュだ。

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デザインのこだわりは管理棟にも

近代製鉄発祥の地である釜石。製鉄用の洋式高炉を導入したのは江戸時代にさかのぼり、その当時、高炉を覆った石積と建屋を模したデザインが、ダム管理棟に採用されている。
管理棟には資料展示も。

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おもてなし感あり。湖上には斜張橋も。

洪水調節が主目的の防災専用ダムではあるが、水なしダムではない。下流側の河川から取水する用水などへの安定的な水供給のために一定量の湛水を行なっている。
そのおかげで緑に包まれた、こじんまりとしつつも美しい湖面が現出。
ダムができる前からの甲子川の在来魚であるヤマメ、イワナが生息するほか、ブラックバスも確認されている。

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アクセス・駐車場

ダムサイトほか湖畔各所に駐車場。
アスレチック施設、広場なども。
アプローチ路は1.5車線。

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マークした場所はダムサイト駐車場。