ごうどぜき。
里見八犬伝の秘境感あふれる農業用ため池。
房総半島は比較的手軽に秘境感を楽しめる池やダムがあちこちにあることも大きな魅力であるが、ここ合戸堰は空撮でもしない限り姿を見ることさえままならないほど四方を完全に山林に囲まれ、また池の流れ出しから下が崖になっていることから放水時には滝のようになる特殊性に加え、滝沢馬琴『南総里見八犬伝』のヒロイン伏姫(ふせひめ)が身を隠したという伏姫籠穴(ふせひめこもりあな)がすぐ下手にあるといった立地も含め、まず房総第一級の秘境水辺スポットといっていいだろう。
じつは取水用パイプラインも備える農業用のため池であり、滝のように見えるのは池の洪水吐から流れ出た水。
地元では「合戸の滝(ごうどのたき)」とも呼ばれているようであるが、ため池の機能上、満水時にしか現れない。
それにしても、なんという溜め池であろう。林道側から見ると、滝を見上げる感じで池の姿はまったく見えない。この先、林道は高巻きして池より高い場所に出るが、わずかに水面が垣間見える程度で、その全貌がつかめない。
どこからどこまでが人の手によって造られた堰体なのだろう。木や草が生い茂って堰体の構造がよく分からないが、もともとの岩盤をうまく利用しているようだ。しかし土盛りだけのアースダム構造で垂直の堰体など造れるのだろうか。じつは草に埋もれているだけで、コンクリートアーチダム?
そんな妄想と静寂を打ち砕いて、凄まじい銃声が鳴り響いた。ほどなく軽トラックに猟犬をのせたおじさんが下ってきた。空撮機材を撃ち落とされなくてよかった。
こんな秘境感のある池だが、高速道路インターもある市街地からわずか1km程度の距離なのである。
伏姫籠穴の入口には駐車場とトイレがある。
池から300m下手に、伏姫籠穴の入口があり、ここに小さな駐車場とトイレあり。籠穴までは階段の坂を登っていかねばならないが、トイレには無料で貸し出してくれる杖が立てかけてあった。
マークした場所は伏姫籠穴の駐車場。