【ふくがみこ。福地ダム(ふくじだむ)】
海に口を開いた貯水池の、山側にダムがある逆転。どうなってんの?
沖縄北部にある国営「やんばる9ダム」のひとつ。
高さ91mのロックフィルダムは沖縄最大を誇り、広大な貯水池はダム湖100選にも選定。
そして何といっても気になるのは、山から海に向かって長くのびた貯水池なのに、山側の奥に堰体がある逆転構造と、日本唯一というサイフォン式洪水吐の存在。
福上湖に近づいてまず驚くのは、一見、まったく別の場所に二つのダムがあるように見えることだ。主堤から離れること直線距離で6km、海岸近くの県道の橋上から、小ぶりな重力式コンクリートダムのようなものが見える。沖縄のダム湖ではしばしば見られる二つのダムで堰く場合の副堤かと思った。しかしこれはあくまで「洪水吐」ということだった。
ロックフィルダムでは構造的に堰体から少し離れたところに洪水吐を設けることはめずらしくない。実際、堰体の少し横にラージヒルジャンプ台を思わせる長いコンクリート流路が山の斜面を下っているが、この上にメインの洪水吐がある。これとは別に海近くに「上流洪水吐」が設けられているのだ。なんと、副堤に見えたものは、洪水吐でしかなかった。
長いダム湖の山側に堰体があり、海側に洪水吐があるという異常な立地関係。ふつう山側(湖頭)は流れ込みで、海側の吐き出し(湖尻)に堰体を造るという常識がひっくり返っている! 特殊な地形のなせるワザ、というだけでは済まない。
これは北部の山間地帯に集水専用として設けられた3つのダムと安波ダムから地下導水路で水を引き入れている統合運用と関係が深い。いってみれば4つのダムで集められた水がドバドバ入ってくるのだ。福地ダムはいざというときに4ダムで支えきれなくなった大量の水をいっきに海に逃がす洪水調節の役割も期待されている。
そしてこの上流洪水吐に仕込まれているのが、日本唯一のサイフォン式。
増水時、一定の水位までは内部に仕込まれた堤の高さを越えた分だけをちょろちょろ流すが、ひとたび呑口リップを越えるや、サイフォンマジックで轟々と大量の水を海へと吐き出し、洪水を防ぐ。スゴい! カッコいい!
ダムは琉球列島米国民政府が工事着手したものを日本政府が引き継いで完成させた。ダム横に日米承継記念碑が立つ。
マークした場所にダム資料館。