水辺遍路

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美女池(兵庫県南あわじ)

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淡路島南部のダム重連に半水没するミステリアスな池。

重力式コンクリートダムの大日川ダム湖の中に、島のように一本の堤が浮かぶ。堤の中央にあるサイロのような取水管理棟が何ともいえぬ雰囲気を醸し出す。
堤はよく見るとゆるく弧を描き、端に石碑と祠らしきものも立っているが、その先は切れて湖水にひたされている。
堤に行くにはここを泳ぐかボートで渡るしかなさそうだ。しかしこの下には直径1mほどの穴があって海と通じ、池に棲む大蛇が行き来する道となっていたという伝説があるだけに怖い。池で泳いだあとに高熱をだした村人がいるという言い伝えもあるだけになおのこと。

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上流側から。手前が美女池。みごとな水没ダムの様相。堰体右側は水没しているが、元は洪水吐があったと思われる。そのあたりに海に通ずる穴があったとも。


美女池の名は、池の中に立つ若く美しい女の目撃談からきている。大蛇の化身とのことで、江戸時代の話だが目撃例は多くはない。よほどのインパクトがあったのだろう。池の築造は江戸時代初期。江戸末期に一度、決壊し、修復されている。
美女の名をもつ池はありそうで意外と少なく、福島県郡山の美女池と岐阜県高山の美女ヶ池、茨城県石岡の傾城池がおもだったところ。傾城は中国故事にちなむ美女の意。
美女いう名の池はやはり意味もなくテンションが上がるが、ここは伝説、釣り、景観と多くがそろっている。淡路島でもっとも心惹かれる池である。
心霊スポットとして名を連ねるのも、もはや魅力要素といっていいだろう。池名に引きずられているのか、やはり若い女の霊といった内容の怪異譚が多いが、江戸時代のオリジナル蛇性の淫に引きずられている感もある。ニッカーボッカーをはいたおっさんの霊といった話ならリアリティーもあるが、美女池だけにスピリチュアルな感性も名に引きずられるということか。もろもろあっての美女池である。

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大日川ダム側から見た美女池の堰体。
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美女池の動画を収録。