【雌池、横ノ池】
日本屈指の高級住宅地の裏山に網の目のようにめぐらされたトレッキングコースは天気のよい休日ともなると、山道が色とりどりのリュックを背負ったハイカーで渋滞するほどの人気コース。
この六甲ハイキング銀座における絶好のランチスポットとして愛されているのが雌雄二つの横池。
地図で見ると新幹線トンネルの真上に位置する池だ。
呼び名が少し紛らわしい。岡本八幡谷の登山口に掲げられていたハイキングコースマップには、雄池と雌池の区別はなく、ただ「横池」と記されている。雄と雌の二つの池を合わせて「横池」を構成するようだが、雌池の方は単に「雌池」と呼び、雄池の方は「横池」や「横ノ雄池」と呼ぶケースが多いようだ。
「横池」に「の」を付けて「横ノ池」とする記述も見られるが、どちらが正式なのか分からない。
横池の上を通るパノラマ道起点に掲げられた案内マップには、横ノ雄池に「横池」、横ノ雌池に「雌池」という記載が採用されている。これは地元の人たちの感覚に近いものといえる。
雄池は周囲長300mほど、雌池は200mほどで、両池は100mほど離れている。
地形からは雄池の方が若干標高が高く、二つの池の間には流れがあるようにも見えるが、現地で確認するまでに至らなかった。
というのも不覚にも、雌池への分岐を示す案内標柱の先の道が土砂崩れで崩落しており、雌池は消失したと早合点し、たどり着いた池は雄池と思い込んでしまい、この勘違いに気付いたのは帰還後。
六甲山の山頂ではないが、前山の頂上近くの踊り場のような立地に、なぜこんな奇跡のような二つの池が生まれたのか不思議である。
流入河川、流出河川ともに明確なものは見あたらず、状況によってかなり水位は上下するようだ。
しばらくたたずんでいると、池の中ほどから生き物の波紋がこちらに近づいてくる。なんだろう。無気味。
何が出てくるのかと思ったら、亀だった。エサでももらえると思ったのだろうか、岸まで上がってきてこちらを見上げる。堂々たるものだ。食糧を忘れてしまって、わずかなナッツしかなかったが、かけらをひとつ落とすと、うまそうに食べた。







