水辺遍路

訪れた全国1万1,100の池やダムを独自の視点で紹介

杉池(新潟県佐渡島)

【赤玉杉池 / 元池 / 杉池大明神】

小佐渡を代表する池伝説

テレビ番組『まんが日本昔ばなし』の「宝しゃもじ」(No.1295)は、白馬の助けを借りて互いの棲みかである黒池と青池を行き来し逢瀬する雄蛇と雌蛇を偶然、見てしまったことから話ははじまる。
アニメでは逢瀬の場は黒池ということになっているが、この話の原話となっている佐渡の民話では、雄蛇が棲むのは太郎左衛門池で、逢瀬の場所がここ杉池となっている。


アニメ『まんが日本昔ばなし』に採話

「宝しゃもじ」(No.1295)というタイトルで採話されている。作品中で、杉池は黒池という名で登場する。

youtu.be


 

杉池の池伝説の絵本(2022)

杉池について佐渡一詳しい郷土史家の児玉宗栄氏が監修した絵本を、佐和田の図書館で司書が見つけてくれた。タイトルはズバリ「杉池の竜」。この本は加茂湖畔の旅館にも置いてあった。
「まんが日本昔ばなし」に採話された際に、なぜ杉池が黒池に変換されたのだろう。


 

アニメと現地伝承との差異

アニメで登場するのは若い夫婦だが原話では老夫婦で、夫の名は次郎右衛門。雄蛇の棲む太郎左衛門池とは、太郎vs次郎、左vs右の対照構造があり、池は架空の名とも考えられるが、2.5kmほど西に「黒滝」は現存するが、ここが黒池のモデルなのかは分からない。

園内の二つの案内板。いずれの地図のにも上の方に小さく「杉池」が記載されているが大きな二つの池の方に目を奪われて見落としやすい。


 

現在、「杉池」といわれている池は

杉池は正確には、オリジナルの天然沼沢の杉池(「元池」という表記もある)を指す場合と、人工貯水池であるひょうたん池を含めての広義の杉池の二つの解釈がある。
2018年の初訪時には、ひょうたん池の方に目を奪われて、その奥にあるオリジナルの杉池には気づかないまま帰ってきてしまい、2022年に再訪。オリジナル杉池こと元池と会うことができた。

bunbun.hatenablog.com


 

オリジナル杉池に行く

オリジナル杉池は小佐渡唯一の湧水池だという。
園地の入口から10分ほど歩いた杉池大明神の境内奥にその池はあった。
池畔には根曲がりの杉と御神木の杉の大木が立っており、その足もとをミズバショウが埋めていた。

2022年の再訪時には道路崩落でアクセス路の林道入口にゲートが。


 

池の形態

湧水を水源とする天然沼沢だったが、現在はかなり浅くなっており、岸にはミズバショウ群落がある。ミズバショウは4月に開花。
現在の姿からすると雌雄の大蛇が逢瀬するほどの広さと深さはなさそうだ。
この池の名前のもとにもなっている根曲りの大杉は、残念ながら倒れて横たわっていた。


御神木


 

杉池の祭り

杉池大明神では龍神(大蛇)こと水神が祀られている。池伝説と関連がありそうだが、神社に据えられた石碑には、鬼舞い、小鹿舞い、子どもの舞いの神事が京から来た人物によってもたらされたことが記されているだけだった。
例年6月初旬に開かれる「赤玉杉池祭り」という地域の祭りのことを指していると思われ、このとき奉納される鬼舞いや子鹿舞いは百年以上の歴史をもち、佐渡市の無形民俗文化財に指定されている。
一帯の森は「杉池広葉樹林」として県の天然記念物に指定。
祭りを一目見たいと思い、2022年に日程を合わせて佐渡島に上陸してみたが、両津の酒場でも小木の酒場でも、この祭りのことを知っている人がいない。
観光協会に問い合わせてみても、今年はやっていないという。コロナ禍でかれこれ三年は開催されていないはずで、どうなっているのかと現地に行ってみると、池の手入れをしている地元の人たちがいた。
話を聞いてみると、祭りのハイライトである子ども舞いを担う若人がいなくなり、参加者の高齢化もあって祭り自体の存続が難しくなってしまい、祭りの日には、せめてこうして集まって池の手入れをしているとのことだった。

池横の舞台



bunbun.hatenablog.com
bunbun.hatenablog.com
bunbun.hatenablog.com



 

マップ

佐渡島 池さんぽマップ

ver2.04部分抜粋(全体はA3サイズで作成中)

Googleマップ

マークした場所は駐車場。