水辺遍路

訪れた全国1万1,700の池やダムを独自の視点で紹介

「すりばちくぼ」の池(仮称)(静岡県川根本町)


伝承のロストレイク「すりばちくぼ」とは?

くのわき親水公園キャンプ場のホームページに、地域の伝承として消失した山上湖と大蛇にまつわる伝承が掲載されていた。
ブラタモリなどで注目されるようになった「スリバチ」地形だが、静岡の山奥の山頂に元祖「すりばち」の池があったとは。この消失湖の痕跡を探そうと思った。
まずは以下に、くのわき親水公園キャンプ場のホームページ引用を。

 久野脇の村の西の方に連なる山なみの中に、ひときわ高い山があります。晴れた日には、頂上から御前崎の海を見ることができます。この山を村の人たちは、「すりばちくぼ」と呼んでいます。それは、この山のいただきに近いところに、すりばちの底のような形をした、深い池があったからです。この池は、いつも満々と水をたたえていました。
 いつのころかわかりませんが、この池に大蛇が住んでいるという話が伝わっていました。だから、土地の人たちは、近づくことはありませんでした。
 池の周囲は約二町(約200メートル)、周りはこんもりとした、かしの木やぶなの雑木におおわれ、いつも無気味に静まり返っていました。
 でも、一方の南口だけは、開かれていて沢に続いていました。ここは、野生動物の水飲み場でもあったわけです。あたりの山は、かし、なら、くりなどの木が多く、いのししや、さるなどがたくさん住んでいました。
 ある年の秋の終わりごろ、山の向こうの熊切(今の春野町)の猟師が、ねらいをつけた鹿を追って、このすりばちくぼまでやって来ました。
 猟犬に追いつめられたこの鹿は、「ケェーン。」と一声かん高い声を残すと、池のそばにあった大岩から池に向かって飛び込みました。
(しめた。)
 猟師は、鉄砲で狙いを定め、いざ打とうとした時、あっけにとられる光景に出会いました。それは、飛び込んだ鹿が、足の方から池の中に引きこまれようとしていたからです。
「あっ。」
と猟師は、息をのみこみました。その時、水面がざわついて、大蛇が鹿を半分飲みこんだ首を表したのです。
 次に、首を猟師の方に向けて、かっと目を見ひらき、今にもおそいかかるかの様子をしめしました。
(これはたいへん。鹿の次に自分が飲みこまれてしまう。)
と猟師は考え、思わず、取り上げた鉄砲で大蛇の首にねらいを定めると、一発打ちこみ、まるくなってにげました。
 その当時、へびを殺すとたたりがあるといわれていたので、この猟師は家に帰っても、だれにも話さずにだまっていました。
 ところが、そのことが気になって仕方がありませんでした。三年ほどなにごともなく過ごすことができたので、もう一度行ってたしかめてみたくなりました。
 なかまの猟師にわけを話し、いっしょに行ってもらうことにしました。それは、もし、大蛇が生きていて、おそわれるとたいへんだと思ったからです。
 四、五人で連れだって来てみたところ、池はあいかわらず静まりかえって、生きもののいる気配はしません。漁師たちは、池に石を投げ入れてみましたが、かわったことはありません。
やっと安心して池のまわりを歩いてみました。すると、漁師たちの先を走っていた猟犬たちが、何かをとり囲んでほえていました。

「なんだ。」

猟師が犬をかき分けてのぞきこんで見ると、へびの形をした白骨が、池の出口から谷にそって横たわっていました。たしかめてみると、目と目の間に、鉄砲の玉らしい穴があいていました。あの時の大蛇だったのです。
「この骨はめずらしい。何かの薬になるかもしれない。」
と漁師たちは、持ち帰りました。
 そのころ、漁師たちのすんでいた熊切村筏戸(今の春野町)あかぎれの薬を作って、「いかんどこう」と名づけて売っていました。
そこで、この大蛇の骨を粉にして、まぜ合わせ、作ってみることにしました。
 売ってみると、めずらしさとききめがあることで、大評判になり、売れに売れて、その猟師は、大金持ちになったということです。
 今は、このすりばちくぼも、安政の大地震で、一方がくずれ、満水の池の水があふれ流れ出し、口があいたような後を残すのみとなりました。

x.gd


 

久野脇集落からの山なみ

伝承にある「集落から見てひときわ高い山」がどれかを特定すべく、集落の対岸からパノラマ撮影。
(図の中で「くのわき」を「くわのき」と誤記しています。すみません。)


目星を付けた山をGoogleアースで見ると

集落から見えたひときわ高い山をGoogleアースで確認すると、「南アルプス眺望所」とマークアップされた地点近くの小ピークらしきことが分かった。
また、南側に谷筋があり北側に崩落痕跡もあり伝承の条件とも合致しそうだ。ただ明確に池の痕跡となるようなスリバチ地形! と断定できるものはなく、まさに南アルプス眺望所と記されているフラットで木が生えていない一角があり、その周囲長は伝承にある池と同じく200mだった。


 

地理院地図では三角点が打たれていた

地理院地図では目星の地点には922.6mの三角点が打たれており、集落から見えた「ひときわ高い山」はデータ的にも裏付けされた。ただ、残念ながら山の名前は記されていない。


 

現場に行き空撮

災害通行止めが多く、アクセスに苦労したが、どうにか南アルプス眺望ポイントなる場所に到着。
しかし工事現場かと思って素通り。失態。
空撮でも他の場所を探してしまい、この場所が撮れていたものは一枚だけ。いまひとつ地形の起伏が捉えづらい一枚で、失態。
北側の崩落痕は伝承と一致するが、木の成長具合からして江戸時代の崩落とは思えず・・。


 

念のため周辺の地形も

1,009mピーク方面

標高は上記の地点よりも高いが西に奥まっているため集落からこのピークは見えない。
右下の写真が捉えている地点は、北側と南側に谷筋が見えるが、尾根を道路が通っている。


夕日峠(島田)方面

大井川方面