水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

茶屋原池(福岡県筑前)

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底樋であろうか。見慣れない構造物が水面から顔を出している。ハシゴは水抜き漁のときに池底に降りるためのもの

筑前町には76ヶ所の溜め池があり、毎年、あるいは数年おきに水抜き(現地では「池干し」と呼ぶ)が行われており、管理状態のよい池が多い。
それでも2019年には中島池で大規模な決壊が発生し、以後、各池の点検と改修が続けられている。中島池から250mほど西にある茶屋池は、水田の一角を掘り込み堤をめぐらせた構造の皿池タイプの池である。
周囲の水田と水面の比高は小さく、池畔に設けられた二基のポンプ設備で取水している。

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対岸側にポンプ小屋


筑前町の池では農閑期に水抜きを行なう際に、フナやコイなどを捕獲して漁を行なう慣習もあり、池によっては入札制度による漁業権が設定されている。この茶屋原池も水抜き漁を行っている写真が「筑前町史」に紹介されており、現地には釣り厳禁の看板が立てられている。

ため池の入札制度が昔から行われている。ため池でコイを育て、池干し時に漁を行う権利である。権利を得たグループによっては、フナ、ナマズ、タモロコ(田バヤ)、ウナギ、スジエビなどの漁も行っている。
コイなどの捕獲は、出水口や水深が浅くなった所で行われる。出水口にはタモ網などがセットされ、下ってきた魚を次々に捕獲する。また、水深が浅くなり、動きが鈍くなったところをタモ網で捕獲する。捕獲した魚は真水で泥を吐かせ、魚の臭みが取れた後に、鯉こく・鯉のあらいで食を楽しむ。また、専門店に売り収益を上げる。泥を吐かせ臭みを取る期間は、池の土質と水質によって、数日から数週間と大きく異なる。
筑前町史

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釣り厳禁の看板


茶屋原池で何より興味をひかれたのは、池畔に立っていた一つの石碑だった。
一見、ふつうの記念碑に見える。ため池台帳には「茶屋原池」で登録されているが、この碑文には「茶屋原溜池」と刻まれている。
碑文を読み進めていくと、最後の方で「ええっ??」という違和感にぶつかった。

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中牟田町専用で無い事を明記する


なんなんだ、この石碑は。
占有権を主張するものならまだ理解できるが、「専用でないことを明記」となると、もつれ、しがらみ・・この池をめぐってどれだけ複雑な事情があったのか・・。石碑にしなければならないほど根深いトラブルでもあったのだろうか、などと妄想してしまうのだった。

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