水辺遍路

訪れた全国1万1,100の池やダムを独自の視点で紹介

公所神社下の池(仮称)(神奈川県平塚)

f:id:cippillo:20200120113355j:plain
この銃眼のようなフェンスオプションパーツの用途は?

この池は高台にある公所神社の足もとにあるが、自動車専用の小田原厚木道路によって分断されたかっこうになっている。公所は「ぐぞ」と読む。
じつは地図で見つけたときから、気になってしかたがなかった池である。丸い形状でまわりを住宅が囲む。
航空写真に切り替えると、フェンスの影のようなものとオリフィス枡。ならば調整池かと思うが、水をなみなみと湛えつつ岸辺にはヨシ原も見られるから調整池にしてはちょっと変だ。
現地に行っても、その妖しい池オーラに魅惑された。
冒頭の写真、池をスキなく取り囲むネットフェンスにいくつも銃眼のような穴。手製の穴ではなく、ネットフェンスのオプションパーツとして規格化されている製品のようだ。
ちょうど大人の拳が入るほどの大きさ。ここから銃口を突き出して、鴨猟をするため? いやいや住宅が池を取り囲んでいる。そんなことをすれば無法地帯きわまりない。
まあ、写真を撮るのにちょうどいい。レンズを突っ込んで撮影をしていると、答えらしきものが、向こうからやって来た。

f:id:cippillo:20200120113400j:plain

錦鯉を含むたくさんの鯉たちが集まってきた。
真下に来るものだから撮影画角に入らない。鯉を写そうと離れた銃眼に移動してレンズを突っ込むと、ぞろぞろとまた真下に集まってくる。
エサをくれると思ったらしい。なるほど、この穴は住民が散歩がてらに鯉たちに麩を撒いて愛でるためのものらしい。となると、このネットフェンス用部品は、鯉に餌やりをするための専用パーツということか。そんな需要があると見越して製品化した担当者の深い情愛に心打たれる。しかし、今のところこのパーツを見たのは初めてである。

f:id:cippillo:20200120113348j:plain

f:id:cippillo:20190225122951p:plain

いやはや何ともフシギな池です。
ネットフェンスの真下を見ると、緩傾斜のコンクリ護岸が見えます。一定間隔で二列の石が埋められています。専門用語で何というのか分かりませんが、岸を歩く際に足を滑らさないためのもののように思います。
それと池中央のオリフィス枡。天面から水が注ぎ込むほど増水した場合、明らかに手前側の岸から宅地に向けて水がオーバーフローしてくるでしょう。調整池としてはダメダメな構造。それでは何のための池?
奥に見える高台が公所神社なので、立地的に寺社池だった可能性を考えました。小田原厚木道路によって分断されて何の池か分かりにくくなっていますが、神域に何らかの因縁のある池であれば、宅地化でも埋められず生き残る事例が都心近くでもしばしば見られます。


f:id:cippillo:20200120113341j:plain