その昔、沼のほとりで漁をして暮らした風狂の人がいた。
八幡平湖沼群のひとつで、標高700mほどの山麓にある池。
上から見る限り完全に原生林に取り囲まれており、容易に近づけそうにはない。八幡平アスピーテライン沿いに「大沼」の看板があり、そこから見おろすことができるが、駐車スペースは少し下ったところになる。
深田久弥『日本百名山』の中には、この大沼のほとりに立てた小屋で一生をかけて伝説の碑を探し求めたという狂人の話が出てくる。
読んでいて、どうも他人ごととは思えない自分がいた。
奥州にの伝説には、弁慶と八幡太郎はしばしば現われる人物である。しかし純朴な村人は堅くそれを信じていた。その一例として、沼井氏は八幡平を訪れた時そこの大沼で一狂翁のことを聞かされた。その老人はその少し前まで生き永らえていたそうだが、沼の畔(ほとり)に小屋を建て、漁をしながら一生の間広大な原をあちこちさまよい歩き、義家が残したと伝えられる金無垢(きんむく)の碑を探し求めていたという。(深田久弥『日本百名山』)
大沼と岩手山。
八幡平水辺マップ。水辺遍路謹製。
- 作者: 深田久弥
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/04
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