水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

姥懐溜池(長崎県大村)

ぼかいためいけ。
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「姥懐」の池名の謎に迫る。

「姥懐」という意味深な池名に惹かれます。
姥(うば)の懐(ふところ)。地形に由来するのでしょうか。「ぼかいためいけ」という読みからは「姥」を「母」と置き替えてもよさそうです。
調べてみると世の中にはいろいろな人がいるもので、「姥懐」「姥ヶ懐」という地名についての研究論文がありました。
秋田県内の地名に限定した論文でしたが、山形にも同名の地名があり、母の知恵で難局を乗り切る味わい深い伝承が残され、その名の由来とされています。
この地名は中世ごろの古地図や文献には登場し、木村清幸氏によれば、その由来として、没落した武士と若殿、乳母が住んでいた伝承がある地という説(日本国語大辞典)、「姥」は「崖」の意で、崖に露出した陶土を産する場所の地名とする説(地名用語語源辞典)のほか、以下のような説もあるそうです。

  • 山姥や姥神に関わる伝説がある土地(鏡味完二)
  • 自然の風を防ぎ、南に面して日当たりが良く、乳母の懐にいるような地形。(中山太郎)

しかしいずれも東北地方の話で、ここ九州で池の名前になっているのは、古くからの交易港である大村ならではということでしょうか。読みが「ぼかい」となっているもの他にはないようです。
「姥の懐にいるような地形」と言われればそんな感じもするし、「姥」を「崖」とする説でいえば、この池の兄弟池である大多武溜池の垂直に切り立った湖岸が思い浮かびます。それにちょっと距離はありますが、北の唐津、伊万里は国内屈指の焼き物の産地ですね。
妄想遍路になってしまいましたが、池を少し下っていくと大村湾が見わたせました。

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かつてのローカルバスポンドも、現在はフェンスで閉ざされ、立入禁止看板が。
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南が姥懐溜池。北が大多武溜池。