大門ダム。
300年も世界一は本当か? 疑惑は今や湖底に眠る
この急峻な谷間に平安時代末期の1128年、大門池が造られたと文献にある。堤の高さは32m。それまで紀元前からのギネスホルダーであった中国のグコーダムの30.0mを抜き、一躍世界一に躍り出たわけである。当時の人が世界一を意識したかどうかは別として、この記録は14世紀末のアルマンサダム(スペイン)に抜かれるまで300年ものあいだ続くことになる。
もっとも古い文献上の記録であり、それがどこまで正確なのかは今や知ることはできない。
堤高29.6mとする江戸期竣工説など異説もあるし、そもそも、計測の基準に問題があったともいえるが、ロマンの池として妄想の中で楽しむぐらいは許してもらおう。大門池が何百年もの長きにわたって下流の田畑や人々の営みを支えてきたことに変わりはない。
ただ、その世界一の皮肉といおうか、ひとたび大地震が起これば人々に甚大な災厄をもたらすシヴァ神となる危険性もはらんでいた。
現在の大門池であるが、2012年に治水機能も含む多目的の県営ダムとして、もとの堰体のやや下流に重力式コンクリートの新しい堰体が竣工し、往年の世界一の堤体は水没ダムとなった。水没ダムといっても残念ながら、貯水量を稼ぐ必要からか世界一(だったかもしれない)堰体は壊されてしまったため、往年の勇姿は谷が傍立つ湖面に偲ぶのみである。
もし壊されなければ、新ダムの満水時にも湖上につねにその姿を見ることができただろう。天端標高は堤高35.4mの新ダムよりも高いのだ。ともあれ消えてしまったことで、世界一を是非をめぐる疑惑は永遠に湖底に眠ることになった。それはそれでロマンなことだったのかもしれない。
周辺は古くからの信貴山信仰と結びついた観光スポットで駐車場は有料が多い。
2015年に訪れたときは右岸側にダム公園を建設中だった。2025年の再訪時には「大門ダム公園」として遊歩道ができていた。ただ駐車場が確認できなかった。とっくりダムの堰体を渡った先にトイレ付きのポケットパークがある。
2025年の大門ダム






2015年、建設中のダム公園

マップ
ニッポン湖沼図鑑マップ
部分抜粋。ver.1.04(2025年11月更新)

