水辺遍路

訪れた全国1万1,100の池やダムを独自の視点で紹介

津崎溜池(茨城県那珂)

釣り禁止措置がとられたのに、へらぶな釣り師がいた事例として西洞溜池をとりあげたが、同じ茨城北部には、さらに興味深い事例が見られた。津崎溜池である。

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池を取り囲むように鉄製のフェンスが張り巡らされ、警察連名の立入禁止看板がある。これは立入禁止看板の中でも、もっとも警告レベルの強いものであり、愛知県などでは釣り人が逮捕された事例もある。ただ正確には警察が法的に動く根拠としては「不法侵入」しかない。市の条例は別として、警察の活動の根拠となる刑法では釣り自体を罰する項目はないからである。不法侵入を問うためには根拠となるライン(フェンスもその一例)が必要になる。けっこうな費用がかかる。警察連名の立入禁止措置は施行者にとっても、なかなかたいへんなことなのだ。それに警察にとっても通報があれば釣りごときでいちいち出向く義務が生じるわけで、ただでさえ忙しい警察にとっては、できればやりたくない仕事のはずだ。つまり地元なり行政なりのかなり強い要望があった上での措置と思われる。

このように最上位の警告レベルにある津崎溜池だが、フェンスをあざ笑うかのように固定釣り台が池を取り囲む。かつては釣り場だった場所に、後からフェンスが作られたと考えるのが妥当だが、へらぶな釣り師はローカル性が強く、地元の農家をはじめ水利権者と強力なネットワークを構築していることが多い。もちろんそうでなければ、このように派手に固定釣り台を設置することはできない。

通常、釣り禁止措置がとられると、行政によって釣り台も撤去されるものだが、この池ではなぜかフェンスと釣り台が共存している。しかも放棄されているわけではなく、使われている痕跡がある。というか、堂々とおじさんが釣りをしている。ものすごい権力者なのだろうか。それとも名を言ってはならぬアウトロー?
釣り禁止措置を決める際に、地元でどのような協議が行われたのか。津崎溜池にはドラマがありそうである。