水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

貝喰の池(山形県鶴岡)

かいばみのいけ。御池。善法寺。

ここぞ元祖「人面魚発祥」の池である。
善法寺の奥の院にあり、いわばご神体のような存在である。当然ながら釣り禁止。
地元の人はコイに卵をあげるという。池にはエサをあげるための(?)階段までついており、人影を見つけると、コイはこの階段を這いのぼってくる。滝登りならぬ階段のぼりである。全部が全部、人面魚というわけではないが、けっこう異様な光景であった。
駐車場があるが池までは参道を少々歩く。


参道




<歴史>
出羽三山が海にむけてひらけた地にある鶴岡。
古来から北前船による海運の要衝であった鶴岡には、北海道から佐渡にわたって海運業者の信仰を集めた寺がある。
この善宝寺は竜神との因縁が深く、さまざまなバリエーションの伝承が残っている。その伝承に必ず出てくるのが貝喰の池だ。
伝承のひとつに、身欠きニシンをくわえて池に入ると雨が降るが、龍神の逆鱗に触れるので決して行ってはならないという禁忌があった。藤沢周平の『必死剣・鳥刺し』みたいな必死必殺のワザである。日照りに困った村人が決死の覚悟でこの禁を破り、身欠きニシンをくわえて池に入るも雨は降らず、七日後に死体で上がった。
身欠きニシンをくわえた必死の形相を思うに、雨も降らないというオチのなさが、世の厳しさを感じさせる話である。


<施設・設備>
駐車場、トイレ、参道