水辺遍路

訪れた全国1万1,100の池やダムを独自の視点で紹介

比佐田沼(埼玉県鳩山)

アクセス路が分かりにくかったため、日の出早々にマウンテンバイクで事前調査。
池の横にじゅうぶんな駐車スペースを確認し、あらためてクルマで現場入りした。
コンクリート堰堤で作られた小規模な砂防ダム湖の雰囲気、水質も澄明。
池の西と南側に固定釣り台も多数設置されており、「15尺規定、バス禁止」の立看板。
18尺の新竿を試してみたかったが、看板の指示に従い15尺を出す。釣り開始早々に小べらがよくウキを動かしてくれた。常連のおじさんがひとり、またひとりと増えていく。なぜか、皆、ちらちらとこちらを窺う。
1尾がスレで釣れ、さあ時合ができたというときになって、この池のリーダーらしきおじさんがやって来て言った。
「ここは会員制だから。遠くから来てもらって、わるいけど・・」

日本屈指の「へらぶな王国」の埼玉は、数多くの素晴らしい池がある。この他にない素晴らしさは地元の人たちが時間と手間をかけて作り上げてきたものである。時間と手間の量が、いつしか閉鎖的な空気をも醸成してきた。他県ナンバーのクルマを見れば「だれ?」といった囁きが放たれる。

さすらいの野釣り遍路は、地元へのリスペクトを一義とする。つくったばかりのエサがもったいなかったが、すみやかに撤収。
あとからやって来た地元の若いバサーたちも追い返されていた。若者に釣りへの門戸をひらいてあげないかぎり、この池の十年後はどうなるのか。往年の名だたる釣り場が廃墟のようになっているのを、いくつも見てきただけに。




マークした場所が駐車スペース(8台ほど)