水辺遍路

訪れた全国1万1,100の池やダムを独自の視点で紹介

山田大沼(埼玉県滑川)

国営武蔵丘陵森林公園。

国営武蔵丘陵森林公園の顔ともいえる水辺。

関東平野内陸部に広がる武蔵丘陵に幾筋も皺のように刻まれた谷戸には総数300ものため池があるという。じつに滑川町内だけでも200を数え関東最強の野池密集丘陵といっていいだろう。
このうち41もの野池を含めた広大な敷地を日本初の国営公園として整備したのが武蔵丘陵森林公園である。
この公園は単に多数の野池を構成要素にもつということだけでなく、谷戸に造られ守られてきたため池とその周辺の里山環境を今に保存する役割も担っている。ふつうの公園とちがって、池たちに安易な手はさしのべていない。農業用ため池としての役割を終えた池たちは、やがて自然の懐へと還っていくが、その過程も静かに見守っている感がある。
そんな中、山田大沼は公園中央口を入ったすぐのところにあり、いわばこの公園の顔であり、野池たちの代表格でもある。
堰体下は噴水が設けられ、エントランス広場、レンタルサイクルステーションがあり、バリアフリー化の工事も行われていた。池畔は遊歩道とサイクリングロードが走る。

武蔵丘陵森林公園全景と山田大沼

山田大沼は、真ん中にある中堤によって上池と下池に分かれ、堤上の遊歩道で左岸と右岸を結ぶ。バードウォッチャーの姿も見られた。また、この沼は関東屈指のカワウの繁殖地でもあるが、糞害や食害が目をつぶっていられない状態にもなっている。
環境研究者、地元農家、そして公園管理者の努力で営巣数は峠を越えて減少したが、根絶をめざす駆除方式ではなく、沼の周辺を含めた環境を総合的に検討し、カワウと共存する方向を研究者らと模索している。
さすが、関東一の野池の楽園を日本初の国営公園のパッケージングでくるんだだけあって、複雑性や多様性を最大限に考慮している。何かを排除するのは対処法ではあっても解決法ではない。釣り人とも共存できるといいのだが、それはまだ先の話だろうか。
上池のインレット側は渓流広場になっており、流れ込みがせせらぎが気持ちいい親水ゾーンとして整備されており気持ちいい。
この流れ込む部にはコンクリートで仕切られた区域があるが、カワウの糞による水質悪化を落葉層のバクテリア分解によって軽減するための構造物であろうか。

人工渓流の流出口でもあるインレット部。プール状の擁壁が設けられている


堰体下の噴水と上池



カワウの営巣地にもなっている沼岸の樹林


中央口エントランスと駐車場(有料)


国営武蔵丘陵森林公園の案内板。池名がしっかり記されている。



マークした場所は武蔵丘陵森林公園の中央口駐車場(有料)