水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

美ヶ原牧場の池(仮称)(長野県上田)

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日本一高所にある道の駅と、百名山の高原。

深田久弥の『日本百名山』の61番目にリストされている美ヶ原。百名山のなかで「〜山」「〜岳」「〜峰」といった一般的な山名でないものは北海道のトムラウシとここ美ヶ原だけである。
なぜ百名山のひとつに観光バスがぞくぞくと乗り入れ、サンダル履きの人々がアイスクリームを食べる高原がリストアップされているのか長年、不思議に思っていた。
個人的には美ヶ原は観光地として有名すぎるので、長いこと敬遠してきたせいか印象が薄い。先日、そういえば美ヶ原ってどんなとこだっけと思い地図帳を開いてみると、信じがたいほどのダイナミックな地形に心奪われた。そして草原の中に湖周100mほどの丸い魅力的な池を見つけたのも、このときだった。
標高2千メートルという雲上に東西3〜5kmにおよぶ広大な高原が現出した美ヶ原だが、もとは海底だったところが火山活動で隆起し山頂になり、長い時間と雨風による浸食作用で現在の姿になった。無数の起伏と牧場をのせた高原は、それそのものが山頂という意味で百名山入りしている。
なので、マイカーで山頂まで行ける百名山ということになる。それからこの百名山の山頂には道の駅まである。なんと屋外彫刻美術館との複合型の道の駅。日本最高所にある道の駅でもある。美術館の入場は有料となるが、ペットの入場料設定まである。

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道の駅と案内板。


高原という場所を愛で歩いたり物見遊山に出かける文化は明治時代になって欧米から輸入されたものだという。江戸時代までの日本人には、草原や高原は荒涼とした荒れ地か、せいぜい牧場(まきば)のイメージしかなかった。ハイランドの訳語として「高原」という語が生まれたのも明治以降だと深田は美ヶ原の項のなかに書いている。
それだけに観光道路が通じる以前の美ヶ原は、ただ登山者のみが味わえる驚愕があったようである。
深田も引いている尾崎喜八の詩の次の一節に、その驚きがよく出ている。


登りついて不意にひらけた眼前の風景にしばらくは世界の天井が抜けたかと思う。


霧が濃かったせいもあるかもしれないが、マイカーでは「世界の天井が抜けた」というような実感は得られなかった。
道の駅から池まで歩いてみようと思ったが、有料の屋外美術館を抜けていかねばならない感じだったので、山本小屋ふるさと館の方にクルマで移動することにした。山本さんの先祖は、美ヶ原の登山道を拓いた人である。
ここから牛伏山への入口があった。山といっても美ヶ原のなかにある起伏のひとつにすぎず、牧場のなかの遊歩道をてくてく歩いていくだけ。それにしても遊歩道以外はいっさい入れないようになっていて窮屈だった。
牛伏山の山頂からも池は見えず、先にのびる道もない。牧場には立ち入れないので引き返すしかなかった。
ダート林道の奥にある山本小屋まで歩く。小屋といっても今はホテルである。
ホテルまでのわずかな道のりの中間あたりが池への最短地点のはずだが、やはり見えない。牧場側は柵で仕切られ池の方に行く遊歩道も見あたらない。ホテルから奥の林道はクルマ止めがあり、ドローン禁止の看板も。
池はあきらめ、ふるさと館にもどった。かたわらに小さな池があってマスが泳いでいたので、せめてもの水辺記念に写真を撮った。

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この先に湖周100mほどの丸い池があるはずなのに立ち入りもできないし、霧で見通しもきかない。ドローン禁止の看板もあり、今回のところは打つ手なし。


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牛伏山の山頂と遊歩道。


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この先は犬はリードにつなぐ、自転車は押す、ドローンは禁止、とのこと。


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霧のせいで美ヶ原の雄大さが今ひとつ。


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山本小屋ふるさと館と、かたわらの池。


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案内板。


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地図の中心あたりに池があるが地図記載はない。航空写真に切り替えると確認できる。マークした場所は道の駅。