水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

東山円筒分水槽(富山県魚津)

2022年の再訪時には、以前にはなかった芝生広場や駐車場、バイクラックも整備され、より魅力的な水辺空間になっていた。

「日本一美しい」ともいわれる円筒分水池

水の供給量にかかわらず公平に水を分配できる仕組みとして全国に広まった円筒分水工は(円筒分水池)、富山県にも四つが現役で稼働している。富山県では円筒分水槽と呼ぶようだ。うち魚津には東山円筒分水槽のほか500mほど南に貝田新円筒分水槽もあり、富山の円筒分水ホットスポット。
最近では円筒分水池はパワースポットとしてSNSで話題になるなど、新たな観光資源としても注目される。なかでもSNSで日本一美しいといわれる東山円筒分水槽は、オーバーフローから流れ落ちる水の大きな落差とともに、その立地条件のよさが他にはない美しさの源泉となっている。

 

2020年、登録有形文化財に

東山円筒分水槽を初めて訪れた際には、駐車場や観察用のお立ち台もなく、田んぼの中のそっけなさが味わいにも感じたが、その翌年には国の登録有形文化財にも指定。


 

田園風景とのバランスも絶妙

かなりの水圧と水量がなければこの落差は得られない。立山を背にした富山の地形がもたらした景物といえる。
美しさ日本一の是非はともかく、注目したいのは周囲を水田に囲まれた現役バリバリの現場感と、水を公平に分配した先の水路が分かりやすい点。
滝のような水流と水音を愛でるだけでも癒やされるが、流れ落ちた水の行く先にも目をやってほしい。水争いを解消し、豊かな実りを育む名水が、天神野用水・青柳用水・東山用水を元気よく走っていく姿に心が熱くなる。


分配された水が三方向に流れ出ていく先が見えるのも魅力。



 

豊富な水量を支えているのは

それにしても、これだけの水がどこから湧き出てくるのだろう。
じつは片貝川をはさんだ対岸にある貝田新分水槽で分けられた水を、163mもの導水トンネルを経て横断させている。対岸側の方が標高が高いのでサイフォン原理で水が噴出しているというわけである。
現場に設置された案内板のイラストも分かりやすくて親切。
アクセス路は二車線で道沿いに駐車スペースもある。円筒分水の標識もあるので注意していれば迷うことはないだろう。
水量がもっとも増えるのは田植えの五月。周囲の豊かな水田に囲まれた円筒分水池の姿もいつか見てみたいものだ。




 

分水した水路

水路の先にあるのが円筒分水池。


 

水辺動画



 

掲載紙

「地方公務員安全と健康フォーラム」2022年8月発行号の巻末ページに「日本全国ぶらぶら池さんぽ」第1回の「円筒分水池アラカルト円」でこの東山円筒分水槽をピックアップ。


 

駐車場とアクセス

2022年の再訪時には、駐車場とバイクラックと新たな看板が新設されていた。場所も少し分かりにくかったが、道路標識も新たに設置されていた。



 

Googleマップ

マークした場所に駐車場とバイクラック。