水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

姥が池(栃木県芳賀)

【うばがいけ。弁天池。姥が池ロマン公園】

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めぐらされた水路に見えてしまう姥が池。じつは橋がかかっているところは池に浮かぶ島、という設定。

池の周囲は公園として整備されているが、公園名の「姥が池ロマン公園」から、老女のロマンスなどを妄想しかけている場合ではない。
ここでの姥は、伝説の内容から乳母の方だろう。「弁天池」という通称もあるが、現在の地名の「祖母井(うばがい)」は池の名に由来するというから、あれれ、乳母ロマではなくて、やっぱり婆ロマの方?
池の400mほど西に祖母井神社(うばがいじんじゃ)がある。江戸時代にこの池に祀っていた繁栄の女神(木花咲耶姫命)に引越し(遷宮)をしてもらったもの。平安時代にはすでに池に女神が祀られていたというから歴史は古い。なお池の通称になっている弁天様も商売繁盛でお馴染みの女神だが、木花咲耶姫命とは別人。歴史のどこかで混同があったのだろうか。

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姥が池ロマン公園の舗装駐車場に入るとトイレ、広場が見える。まっすぐのびた遊歩道は杉木立へと分け入っていく。ほどなく木々に覆われて昼なお暗い一角に。
樹林のなかのエアーポケットのような不思議な空間。
池というより複雑にうねった水路を清水が流れている。
池は俳聖・芭蕉も「おくの細みち」で採りあげた室の八島をかたどって改造されたというから、池のなかに八つの島を造る意図だったのだろうが、島が多すぎて、やっぱり水路にしか見えない。しかし本家・大神神社(おおみわじんじゃ)の室の八島だって水路っぽい。ドーナツの穴を空間と見るか実体と見るかの違いであって、忠実といえば忠実である。
豊かな湧水のおかげであろう。縄文時代には人の営みがあったというから、そのころには湧泉を池に改造したとも考えられる。
湧出量が通年安定していて枯れたことがないといい、農業用水としても利用されていたというから、かなりの水量だ。
そうと知っていれば、樹齢800年にして倒れた御神木たる老杉の切り株に気をとられてばかりではなく、池の取水設備も探してみるべきだったのに、ふくよかな乳母像のロマンに充足して帰ってきてしまった。
同名の池は千葉県佐倉にもあり、姥は姥でも悲しすぎる伝説が伝えられている。

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池畔にある老杉と厳島神社。
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駐車場と案内板。


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乳母ロマン。

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マークした場所は駐車場。