水辺遍路

訪れた全国1万1,100の池やダムを独自の視点で紹介

高瀬ダム(長野県大町)

たかせだむ。高瀬ダム調整湖。
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日本一のロックフィルダムとダム湖100選の高瀬エメラルド。

ロックフィルダム好きにはたまらない。なんといっても日本一の高さをもつ岩山である。ダム全体では同じ大町にある重力式コンクリートダムの黒部ダムに次ぐ二位で、大町には日本一と二位のダムをもつ。
ともに東京電力が管理する発電用ダムであり、東京の旺盛な電力需要を支えている。
一方で世界的観光地の様相を呈する黒部ダムに対して高瀬ダムの方は、ひっそりと地味なたたずまい。立山のアルペンルートとセットになった黒部ダムは高瀬ダムと同じくマイカーでのアクセスはできないが、その行程にトローリーバスが運行されるなど興業性があるが、高瀬ダムは七倉山荘から先は徒歩か指定タクシーで進むしかなく、苦労して行ったところでダムカレーがあるわけでもない。

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しかし純粋なロックフィルダムファンにとっては幸いで、黒部ダムのようにラッシュアワーなみの観光客にもまれてうんざりすることもないし、ダムを維持管理するダンプの車列が時折やって来る以外はいたって心静かにダムと向き合える。
高瀬川のエメラルドグリーンの水を堰いた湖水は、北アルプスの山嶺にかかった雪渓を映しだす。厳しい山々に塞がれているため開放感はないが、ここにしかない水辺景観をうみだし、ダム湖100選にも選ばれている。
そんなダム湖だが特に愛称はなく、ダム湖100選の登録名は「高瀬ダム調整湖」である。調整湖という名称はあまり聞いたことがないが、さすがに池と呼ぶのが憚られる水深をもつのであろうか。


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高瀬エメラルドともいわれる美しい湖水。

ダムへのアプローチは徒歩で片道1時間。

七倉ダムのインレット側にあたる場所まではマイカーで進めるが、ここから先はゲートと警備員の詰め所がある。槍ヶ岳方面への登山口となっているため、駐車場、公衆トイレ、七倉山荘もある。
タクシー乗り場が目を引くが、ゲートから先はマイカーだけでなく自転車さえ通行禁止のため、先に進むには徒歩で行くか認可タクシーを利用するしかない。

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東電の詰め所とゲートがあり、ここから先はマイカーでは進めない。


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認可タクシーと駐車場


大型ダンプが隊列を組んで通る。自転車もだめ。

ゲート前の詰め所で徒歩の場合、何時から通行できるか訊ねてみると、特に時間規制はしていないという。初日は雨だったのでこの登山拠点の下見だけとし、翌朝、天気の回復をみて早朝からアタックすることにした。
ゲートから高瀬ダムまでは東京電力の管理道で全線舗装路であるが行程の多くはトンネルとなり、楽しいトレッキングという感じではない。
槍ヶ岳方面への登山道も兼ねているため、歩行者のためにトンネルの片側に人ひとり歩けるほどの歩道が設けられている。このトンネルは高瀬ダムに流入する大量の土砂を運び出すために、大型ダンプが車列を組んで走るため、自転車も通行禁止にしているとのことだった。


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高瀬ダムへのアクセス管理道と堰体法面の管理道。
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圧巻すぎる岩山。

一時間ほど歩くと前方に異様な石積みが見えてきた。高瀬ダムの裾の部分だった。堤高176メートルもあるため上の方は雲だか霧だかにかすんでいる。
ダムの足もとから、つづら折りの舗装路を1.5kmも歩いてやっと堤頂に出る。岩山のようなものなので直登すれば少しは早いかと思ったが、管理道以外は立入禁止。それ以前に遠目にはなだらかに石を積み上げているようみ見えたが、間近で見ると取り付くのが大変そうな大きな岩だった。
ダンプも通る道なので幅はあるが長い。いっこうに進まない。さすが日本一のロックフィルダムという実感が、肉体を通じて刻み込まれる。

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巨大な洪水吐をもった岩山。魔の山のようだ。


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高瀬川水系展望図。槍ヶ岳を頂点とする日本一のロックフィル街道である。写真は七倉ダムで撮影。


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堰体上にあった案内板。ここからタクシーを呼ぶと1時間かかると書かれている。


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七倉山荘と案内板


マークした場所はマイカー駐車場。これより先は徒歩か特定タクシーのみ。自転車も不可。