水辺遍路

訪れた全国1万1,100の池やダムを独自の視点で紹介

須川湖(秋田県東成瀬)

【すかわこ / 朱沼】

空を映しつつも、森林の中の瞳のように青く輝いているのは、強酸性の水質ゆえか。(2020年撮影)

栗駒山湖沼群の筆頭ナチュラルレイク

岩手、秋田、宮城の三県の県境が交差する分水嶺が、二百名山にも選ばれているみちのくの名峰・栗駒山である。昭和以降も水蒸気爆発を起こすなどしたが、遠目になだらかな山容は火山とはいえいかにも東北らしい。この山が秋の錦で着飾ったたおやかな姿は、宮城、秋田、岩手の三県の人らにとっては毎年恒例の季節でもある。
栗駒山はずっと百名山だと思い込んでいたが、この稿を書くにあたって百名山の選にはもれて二百名山になっていることが分かった。どうも合点がいかず本を読み返してみると、果たしてその後記に「東北地方では、秋田駒ヶ岳と栗駒山を入れるべきであったかもしれない」と深田久弥自身が述懐していた。百という選には漏れたものの、百名山に入ってもいい山であることは間違いない。

 

湖名は栗駒主峰の名でもある

栗駒山と須川岳

この栗駒山の主峰の名、そして、ときに山ぜんたいの別称となるのが須川岳である。誉れ高い須川の名を冠した須川湖もまた、東北のみならず全国ニュースで紅葉に染まった須川湖がいち早い秋のたよりとして映し出される。
10もの登山ルートをもつ栗駒山でも、須川湖近くには登山拠点となるビジターセンターが設けられ、シーズンには多くの登山客でにぎわう。
長野県上田にもまったく同名の須川湖があるが、そちらは「すがわこ」と読む。こちらは「すかわこ」で濁点がつかない。長野の須川湖が国体スケート会場になったこともある。

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古名「朱沼」と朱沼神社

一方、古名の「朱沼」。「赤沼」という名は全国にままあるが、朱沼というのはめずらしい。
コバルトブルーの水をたたえる湖がなぜ「朱沼」なのか。
湖畔には朱沼神社がある。神社自体は湖の公園化を請け負った会社が寄贈したものなので歴史あるものではないが、中に据えられた石仏は湖に昔から立っていたものだという。須川湖の古名の朱沼から神社名を採っている。
この古名の由来は晴れた日に湖岸を歩けばすぐ分かる。酸性の湖水によって岸の土に含まれる鉄分が酸化し、赤茶けている。水は逆に成分の乱反射で青い。

池畔にある朱沼神社。



 

火口湖の強酸性の水質のため生物には厳しい環境

須川湖はキャンプ場や無料駐車場、トイレもあり、ボート遊びができるものの、強い酸性水質のため魚類はいないらしい。湖の周囲には県道も含めて事実上、舗装道路で取り巻かれている。そんな立地からこの湖の成因が火口湖であるとは予想しなかったので驚いた。

初めて訪れた際は雨だったので、駐車場とビジターセンターを確認しただけで湖を後にしたが、栗駒山登山とあわせてぜひ再訪したい水辺である。2019年6月に再訪したが、午後五時前に到着したこともあって、やはり慌ただしい訪問であった。




 

須川湖の施設・設備

ボート乗り場


キャンプ場

湖岸遊歩道


駐車場と案内板





 

須川湖の景観

湖岸

水は清澄で底を埋める大きな岩が透けて見える。(2018年6月撮影)

2022年7月



2020年

2019年6月

2018年4月



 

マップ

栗駒山の池さんぽマップ

2023年7月 ver.1.0初出。