水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

大関堰(大堰)(千葉県市原)

大堰。
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ダムではないけどダムマニアが巡礼する「ダム穴」

堰堤の高さはダムスペック未満であるものの、かつてはダムファンの聖典『ダム便覧』に誤掲載されていたようで、ダム穴をもつ希少な巡礼池として、今なおエンスージアストを惹きつけている。
ダムファンにとっては希少なグローリーホールなのかもしれないが、房総の野池マニアにとっては、このタイプの余水吐をもつ野池は見慣れたものだろう。
風呂桶サイズ、四角い枡のようなコンクリート製の小さな余水吐を「ダム穴」(ダムホール、グローリーホール)の範疇に入れてよいのか正直、よく分からないが、房総の日常的な風景がマニアから「全国で九州とここと二つしかない」と神格化されていたというのも、ちょっとした誤掲載が生みだした珍名所というべきか。
私の知る範囲で房総きってのダム穴をもち、かつダムスペックを満たすものとしては、広田ダムこと海老敷第一堰である。ただ、この穴、かなり手ごわい。

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大堰には堰体下に駐車スペースがあるが、アプローチ路は数百メートルの未舗装路。堤が少々漏水しているのか、雨後などはけっこうぬかるむので注意。
ブラックバス釣り、へらぶな釣りの房総きっての人気フィールドである高滝ダムから近いことから、回遊してくるバサーも少なくない。
さて「大関堰」という名称についてだが、現地の改修記念碑には「大堰」とだけ刻まれており、相撲を連想させる「大関」なる語は地名としても見あたらない。(地名は「山口」)
「大関」と「大堰」の読みが同じだけに、どうも疑わしい。
また、実際に「大関」の名をもつ堰が東に20kmほどの長生に実在するので、ますますあやしい。
可能性として、ここ大堰は、「大関」でもなく「ダム」でもなく、ただ、ちょっとした誤記のみによって「大関堰ダム」なんていう記載事例にまで発展した、妄想とネットが生み出したミステリーなのかもしれない。
えてして名所の名前とは、猟師のそらごとを作家が推して定着した百名山の「悪沢岳」のように、偶然がもたらす余幅に、またおもしろさがある。

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堰体下の駐車スペース。
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