おおとどだむ。
「熊嵐」の銀爺が住んでいた風景?
「熊嵐」の銀爺のホームフィールド「鬼鹿山」を水源とする、防災とかんがいの両機能をもったフィルダム。堰体の後法面は草で覆われていて一見、アースダムだし、「ダム便覧」でも「アースダム」となっているが、このきつい斜度と巨大洪水吐があることからロックフィルダムと思われる。また堰体前法面(貯水池側)から見るとロックフィルの様相が分かる。
目を引く圧倒的ボリュームの洪水吐だが、よく見ると導流部にオリフィスっぽい穴が開いている。この穴はかんがい用ダムとしての常用洪水吐で、防災用の顔が上の巨大な非常用洪水吐という二段構え。
そんなわけで、ぱっと見の外見は、アースダムと重力式コンクリートダムのコンバインダムのように見えて新鮮だが、ロックフィルダムであればこのような形態はそれほどめずらしいものではない。
アプローチ路は全舗装でそれほどハードでもなかった。
このダムが堰く大椴子川の河口周辺の砂浜は初夏シーズンの休日はサクラマス狙いのルアーアングラーで管理釣り場状態。北海道でこの人口密度はすごい。
鬼鹿山といえば北海道一の熊打ちの名人、といっても明治時代の話ですが、このあたりをホームフィールドにする「銀爺」という人がいました。今なお日本史上、最悪の死傷者を出した熊襲撃事件を題材にした吉村昭『羆嵐
』救世主であり、ダークヒーローです。
たびたび紹介してきた本ですが、さすがに読んで夜眠れなくなることはなくなりましたが、やっぱり読むとビビります。最後にタイトルの意味が分かったときの爽快感・・明治時代の黎明感の裏にあった重く暗い空気もグッときます。私にとって北海道の山間部の風景は、いつもこの本のモノクロームなフィルターがかかっていて、より魅力的に見えるように思います。
- 作者: 吉村昭
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1982/11/29
- メディア: 文庫
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