池の伝説に、名刀正宗と妖刀村正のふたりが。
日本史好きであればムラマサの名は聞いたことがあろうし、刀剣マニアは目まいを覚えながら「妖刀・村正」の鈍い光を思い浮かべるだろう。
そして懐かしき「ウィザードリィ」の
MURAMASA BLADE(ムラマサブレード)!
1981年にアメリカからロールプレイングゲームを世界に知らしめ、敵を倒してポイントを稼ぎ、より強いアイテムを集めていくという、現代に至るゲーム構造を切り拓いたエポックメーカー。
そのシリーズで代々、最強アイテムとして憧憬を集めたのがムラマサブレードである。アメリカ発のゲームの世界で、日本の刀剣が最強武器とされていたことに驚いたものだ。当時はそういう発想がなかった。
さてここ村正の名が冠せられた池だが、今はただ火葬場と雑木林にはさまれた空き地が陽光を浴びているだけ。
「円照寺三日月の池」という呼び名もあるが、池は三日月の形をしていたといい、空き地にはわずかに三日月の形の痕跡がうかがえる。なるほどそういわれれば雑木林手前の土盛りのあたりに三日月のカーブらしきものに見えなくもない。
道ばたに池の由来を記した案内板が立っていた。この話がじつに素晴らしい。
素晴らしい話だが、どうもできすぎていると思ったら、正宗と村正の二人の日本を代表する刀工をめぐっては講談で人気の演目になっていて、正宗と村正が同じ師につくライバル弟子だったり、正宗が師で村正が弟子だったり、細部のバリエーションもいろいろある。
村正の刀は落ちてくる葉がすうっと吸い寄せられ、刃先に触れただけでまっぷたつ。一方、正宗の刀は落ちてくる葉がどれも刃先をよけていく。
そんな感じの演目。
ロマンはないが正宗は鎌倉時代の相模国(神奈川県)の刀工、村正は江戸初期まで最低三代つづいた伊賀桑名(三重県)の刀鍛冶ブランドというのが実際のところのようである。
マークした場所に村正の池の案内板。