水辺遍路

訪れた全国1万1,100の池やダムを独自の視点で紹介

久末ダム(福岡県福津)

ひさすえだむ。久末貯水池。久末総合公園。
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一筋縄ではいかない奥深さ。

九州に行くと幹線国道沿いにあることから、何度も通りかかっていて気になっていたのに、いつも夜。カーナビに映った池の形状を見て、よさそうな池だなあと後ろ髪を引かれる思いで通りすぎていた。
この日、久末ダムに会うつもりで時間を合わせてやって来た。
堰体下は総合公園となっており駐車場やスポーツ施設も充実している。公園のキャッチコピーは「水がめの郷」ということで地域で大役を担ってきた池であることが分かる。ブラックバス釣りで人気があると聞いていたが、高いフェンスがめぐらされ釣り禁止と明記されていた。

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堰体天端は舗装された遊歩道。フェンスは屈強で高さもある。


土盛りのアースダムだが、築造は昭和55年なので歴史あるため池というわけではない。施工主は市町村合併される前の町で、上水道を担ってきた。
平地ダムでなだらかな岸が多く、釣りができないのは残念だが、上水道目的の貯水地は水質悪化を理由に釣り禁止とするケースが多く見られる。釣りが水質悪化を招くというのは何となく風評のような気がしないでもないが、たとえイメージでも口にする水には変なものを入れたくないという感情は分からぬでもない。
しかし案内板に、意外なことが記されていた。

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釣り禁止とともに、上水道利用されていないことが記されている


なんと現在は上水道としての利用がされていないではないか。
プリントアウトしてテープで貼っただけのこの案内板には、さらに意味深なことが記載されている。

※久末総合公園の管理ではありません。

一見、意味不明である。が、わざわざ記すには意味があるはずだ。
案内板の設置者は公園仮事務所であることが伺えるので、文の意味としては「久末ダムと貯水池そのものは公園管理者とは別ですよ」という意味であろう。
国営ダムや県営ダムでは、ダムとダム公園管理者が一致しているので、そういうケースではないということを示している。
では、なぜわざわざ記したのか。
案内板の右下に、ダム管理者と公園管理者の問い合わせ先が記されている。
公園管理者は福津市。ダムの方は「水道管理センター」とある。
ダムの築造者は市町村合併前の町であるが、ダム管理は町から市へと引き継がれなかったようだ。
全国的に水道事業は自治体とは別の独立した事業者が行っているが、ダム管理まで水道事業者が行っているのは久松ダムが上水道専用のダムだからだろうか。しかしこのダムはもう上水道用としては使われていないはず。
謎は深まる。
案内板に記されていた水道管理センターなるものを追ってみると、宗像地区事務組合なるところに行き着いた。どうやらここがダム管理者のようだ。
農業用であれば「土地改良区」と呼ばれる組織がダムや溜め池管理を行うケースはよくあるが、「地区事務組合」という組織は初めて見た。
ホームページによれば上下水道事業のほか、救急病院の運営なども行っている。
この組合は複数のダムを含めた大規模な水道ネットワークを運営管理していた。図があったので引用を下に。

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宗像地区事業組合ホームページから抜粋


それにしても、水道事業に使われなくなった久末ダムは、水道事業者のもとで何の仕事をしているのだろう。
親水機能だけの公園池であれば時代の流れからすると、自治体管理に移管されれば貸しボートや釣りを楽しめるオープンな水辺空間へとアップグレードの可能性も? などと池妄想が止まらない。
なんとも不思議な立ち位置の池である。

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堰体下の総合公園と池


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駐車場


マークした場所が駐車場入口。