水辺遍路

訪れた全国1万1,100の池やダムを独自の視点で紹介

幻庵池(神奈川県小田原)

北条幻庵屋敷跡。
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お堀端通りに面した四辻に店を開いたころは、まだ子どもも小さかった。共稼ぎだったので、保育園への送り迎えはおもに自分の役目だった。
保育園の正門前で待っているとき、かたわらに池があることに気づいた。こんなところに池があるんだ、と思った。
そんな話を小田原でバーを営んでいるマスターから聞いた。マスターにとっては名も知らぬ池だったし、池を見ながら何を思ったかも語らなかった。
ふつう、そこにある池を人は意識しない。それでも、ごくたまに人生の記憶にしおりのように挟みこまれる池もある。そんな水辺を訪ねてみるのも、ささやかな楽しみのひとつだ。

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小さな池だが鯉の幼魚も。自然繁殖しているようだ。
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池の水源は湧水のようである。
もとは北条幻庵邸の庭池だったと思われるが、現在は保育園前の送迎駐車スペースのわきにひっそりとたたずむ。
北条幻庵は小田原城下町の祖である戦国時代の雄・北条早雲の子だが、嫡男ではなかったため、二代から四代城主の後見人として97歳まで生きた。
その死後、一年もたたないうちに豊臣秀吉の小田原攻めによって北条家は滅びることになる。

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池のかたわらには簡単な案内板が立っている。