【ちちぶこ。二瀬ダム】
蛇腹のように伸び縮みする取水設備。
貯水池の水は上層と下層とでは水質や水温が異なるため、農業用に最適な水を得るためには、どの水深から取水するかが大切。
溜め池では堰体斜面に沿っていくつも穴があいた斜樋が採用されていることが多いが、ダムクラスになるとそう簡単にもいかない。
この二瀬ダムはIHI社製の多段フロート膜式選択取水ゲートを採用。
フライングデッキ下に注目。いってみれば円盤状の取水口がエレベーターのように上下する感じ。エレベーターの最上部が空中回廊(フライングデッキ)になっている。
関東最強パワースポットとして名高い三峯神社の玄関口にあたるダム。
2014年に初めてここを訪れたとき、ちょっと不思議に思うことがあった。
ダムの天端は県道になっており、幅員がとれないので信号による片側交互通行が行われていた。堰体上から写真が撮りたくて歩いていこうとしたが、片側交互の信号が切り替わるたびに、たまっていたクルマの列が次々に狭い天端を走って行くので、危なくてなかなか撮影できない。この県道はダム右岸を経て山の奥へと向かう狭路。どこに抜けるわけでもないのに、このたくさんのクルマの人たちは、いったいどこに行くのだろう。
三年後、古希を迎えた母の頼みで再び、ここを訪れることになった。なんでも関東最強のパワースポット、母の言葉でいえば「憑きものを落とすことでは東日本最強」という三峯神社へのアプローチルート入口こそが、二瀬ダムの天端だったわけである。シーズンには観光バスが次から次へとやって来て、ここを抜けるだけでも一、二時間はかかるらしい。
下の写真はダム堰体の下流側。左に見える建物は見晴らし茶屋。
それにしても豪快なまでの山深さ。秩父最奥部の山々の稜線が重畳と深みのある秩父湖に袖を落としている。
天端上から真下をのぞくと、大型のへらぶなの群れに鯉がまじってたわむれている。
最初のうちこそ道幅が狭かったので、ハイシーズンにはバスのすれ違いなど、どうするのだろうと思っていたら、少し進むと二車線の区間も出てきて悪路というほどではなかった。
それでも二度、三度スイッチバック状に高度を上げ、有料駐車場に着くまでに10キロほども走らねばならなかった。ダム湖のインレットから直線距離でいえば、わずか1.5キロほどの場所なのに。
有料駐車場はトイレつきで収容力があるが、夜間閉鎖は閉門されるので早朝入りなどの際はゲートオープン時間に注意。
奥社へは四つの鳥居をくぐっていくハイキング路。ハイキングといってもヤセ尾根や岩場もあるので軽登山の装備は必要。
登山届けを済まし、いざ奥社へ。
ひとつ目の鳥居までは石だたみで傾斜も少ない。鳥居を抜けると、木々に囲まれたハイキング路。
二つ目の鳥居で小休止。けっこう息が上がりやすくなってきた。
印象的なヤセ尾根。
三つ目から先は、道も変化に富んでくる。四肢を使って獣のように進む。
こんなところも。
こんなところも。
この橋、足もとがほとんど抜けてしまっている。
ほとんど垂直のような石段。手すりにしがみつきながらよじ上る。
最後はほんとうに、這って登る。
奥社に到着。
三峯さんはオオカミが守り神。
やはり霊験か、母がいうように憑きものが落ちたのか、帰路は驚くほど足が軽い。70歳の母もストックはいらんと言って駆けるように下る。何かが落ちたというより自ら獣になったような軽さと爽快感。
あ、そういえば四つ目の鳥居は?
下は名物、中津川いもでんがく。
三峯神社のお酒。てけてっとん。
ダム湖吊り橋
堰体サイド
堰体天端が日本有数のパワースポット三峯神社へのアプローチ路入口ということもあって、信号機が付いている。
貯水池へは信号を直進すれば駐車場もあるが、ほとんどの人は三峯神社目的なので、進む人もいないし、目を向ける人もいない。
Google マップ
マークした場所は駐車場のある見晴らし茶屋