水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

上田池幹線水路円筒分水群(兵庫県南あわじ)

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規模こそ小さいがダブル円筒分水工である。

淡路島の円筒分水は、さりげなく道ばたに。

淡路島の南部にある自治体、南あわじ市には2500もの溜め池がある。全国的にみても圧倒的な溜め池密度を誇るこの土地は、瀬戸内気候の少雨と戦ってきた歴史がある。
水を公平に分配するため昭和時代に生み出された画期的な分水工は、ここ淡路島でも見ることができる。
みごとな溜め池が密集するこのエリアでも、おのおのの溜め池が吐き出し口を寄せ合うのは一筋の川であり、上流側でいくら水を貯める努力をしても、下流側で公平な水の分配がなければ水争いがたえることはない。
大型ダムと網の目のような通水路が整備された現代では、これらの溜め池も補完的な役割を担うだけになったが、集めた水を自然の力だけで公平に分配できる分水工の存在は、今この世にもたらされている平和というものが、あたりまえのものではないということを教えてくれる。
近代土木遺産の上田池を主峰とする幹線水路で今なお見ることのできる円筒分水群もまた、土木遺産に認定されている。とはいっても、ひとつひとつは道ばたの用水路に設けられた、ごく小さく目立たないものでしかない。
ああ、これが淡路島の円筒分水かと慨嘆しながらカメラのシャッターを切っていると、いったい何を撮っているだと地元の人が近づいてくるほど、土地にしっかりなじんでいる。
ここに採り上げた円筒分水は、南あわじ市温水プールと日帰り温泉の南あわじクア施設さんゆー館に隣接しており、場所的にも見学しやすい。

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近隣にはスポーツ・温泉施設が集まっている。円筒分水のむこうに見えるスポーツ施設には駐車場あり。
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マークした場所は円筒分水の正確な位置。