水辺遍路

訪れた全国1万1,100の池やダムを独自の視点で紹介

尼谷地の池(新潟県長岡)

【あまやちのいけ。尼谷池】

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池だけを見るとそう見えないが、じつはけっこうな高台にある。明確な堤もなく、路面からだらだらと地続きになった池は独特の魅力がある。

釣り堀だったころも。そのじつ、怪伝説のある溜め池。

錦鯉の養殖で有名な山古志は、山の斜面を切り拓いた棚田を改造した棚池タイプの養鯉池が2300以上もある。山古志最大の集落である種苧原地区の高台にあるのが、尼谷地の池(あまやちのいけ)。
池横には、あまやち会館という入浴・宿泊施設がある。池もかつてはレジャー要素として取り込まれ、釣り堀として活用されていた時代もあったことが朽ちた案内板からうかがえる。
釣りなど言語道断の養鯉池の多い山古志だが、意外なことに大蛇伝説のあるこの池に対しては抵抗なく釣り堀にしてしまうところがおもしろい。大蛇・龍神などの伝説の残る池では、生き物殺傷は御法度というケースが多いものであるが。
現在、池の水面は水草に覆われ、全体的にかなり浅くなっている。池の先で途切れている国道352の路面と池の水面がほぼ同じような高さなので、遠目には草地がつづいているようにしか見えない。夜など、勢いあまって池に突っ込んでしまいそうだ。

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手前は国道。道路面と地続きのような緩い池。


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遠目には、ただの原っぱ。ぱっと見では池がどこか分からない。




 

レジャー池の痕跡

釣り堀の痕跡としては、道路側にウッドデッキの残骸らしきものも見える。伝説の池のわりには案内板などもない。ガードレールもフェンスもなければ、釣り禁止といった規制看板もない。堰体らしきものも見あたらず、巨大な水たまりといった風情である。この意外性が好き。

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インレット側は玉石を敷き詰めた緩傾斜の護岸。水遊びを想定したような造りだ。


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右岸側はコンクリート製の板止め護岸。水面が近い。


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釣りデッキの痕跡。梁だけが残っている。


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それにしても、惚れ惚れするほど、まったりした池である。



 

ため池としての設備

棚田を従える高台という立地と、水田のような地続き感から、山古志でいうところの「ため池」として造られたものと思われるが、土地にくわしい人に聞いてもはっきりしたことは分からなかった。天然池の男池とつながる大蛇と牛と女の伝説があることから、築造は江戸時代以前と考えられるし、もとは水たまりのような天然の沼沢だった可能性も捨てきれない。
池尻には取水設備を収納した小屋らしきものと、赤いバルブが確認できた。ため池としての機能を担っているようだ。

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取水設備
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水の流入口か。コンクリートで囲まれたパイプが見える。


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沢の流れ込み口と思われる。


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魚がいたが素早く石の間に隠れてしまい、うまく姿を捉えられない。魚らしきものが写っているようにも見えるがどうだろう。




 

男池とつながる大蛇伝説。

あまやちの池には、櫛を落とした娘を呑み込んだ伝説がある。これに対して村人は水抜きをして対抗。しかしこの伝説は大筋からディティールに至るまで、ハイパーシュールというか、理屈など蹴飛ばすようなパワーで突き進むので、うまく要約ができなかったので、山古志オフィシャルサイトからの引用で。

あまやちの池の伝説
その昔、庄屋の娘があまやちの池のほとりを通りかかったとき、頭に挿していた美しい櫛を池に落としてしまいました。娘はあわてて櫛を頭に戻しましたが、その櫛はあっという間に大蛇になり、娘を池の中に引きずり込んでしまいました。娘がいなくなり、村中を探したものの見つからず、ついには池の水を抜くことになりました。すべての水を流したところ、娘を背中に乗せた大蛇が現れ、そのまま天に昇っていったといいます。その途中で大蛇が一休みしたのがいまの蛇窪(じゃくぼ・種苧原)で、その後大蛇が牛に姿を変えて住んだのが小松倉の男池だといわれています。
(山古志オフィシャルサイトより抜粋)

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駐車場・トイレ・案内板など

池横の駐車場。トイレは閉鎖

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あまやち会館

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マークした場所は駐車場。