水辺遍路

訪れた全国1万1,100の池やダムを独自の視点で紹介

雨堤池(長野県松本)

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美鈴湖をひさしぶりに再訪した帰路、山を下る浅間温泉へのルートに入ろうとしたら一方通行になっていた。
しかたなくナビが指示するルートとは異なるルートをとり、半分迷いながらおそるおそる下っていくと、三叉路に無造作に立っていた看板に「池」の文字が見えた。

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おかしい。案内板が立つほどの池ならば事前調査でチェックしているはず。Googleマップにも池としての記載はない。航空写真に切り替えても、池は見えない。
徒歩で案内板周辺をじっくり歩いてみることにした。しかし池はない。
あきらめかけたとき、少し下った道沿いに別の看板を発見。

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雨堤池がしっかり記載されている。
もう一度、道を戻る。注意深く見ると、カーブした道の右側に天然の造形としては不自然な土盛りに気づいた。(下写真)

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よほど注意していないと気づかないが、道路脇の石積みの延長線上に堤がつづいているように見える。
これが雨堤池の堰堤ではないかと目星をつけて、堤を上がってみるが、やはり池はない。
江戸時代に築造された池とのこと。昭和30年代に改修工事がされ、この看板が設置されたのは平成15年。それから15年、最後の改修からは半世紀近く。
池は用済みとなり管理がされなくなったことで、消失してしまったようだ。
何百年も維持されてきた池であっても、人の手が入らなくなると半世紀で消失して元の山林の姿に還ってしまう。
全国に21万あるため池は、そのひとつひとつが誰かの切実な願いと思いと祈りで造られ、多大な努力で維持されてきた。手をかけなくなれば、看板が立つほど地域にとって大切な池であっても、50年とたたずに消失していく。ため池の寿命を考えさせられる池であった。

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マークした場所は雨畑池跡。