【うきぬののいけ。霊池】
万葉集にも詠まれた、神話の山が抱く池。
684年といえば大化の改新の40年後。この年に東海から西日本を襲った白鳳大地震(はくほうおおじしん)は、現在もっとも警戒されている南海トラフ巨大地震と同じタイプの地震で、このタイプとしては記録の残る最古のもの。
この地震はのちに銀山で知られた石見(いわみ)でも大きな被害をもたらし、古くから神話の山として、また「石見富士」として崇められた三瓶山(さんべさん)の西斜面が崩落して堰止め湖を生み出した。これが当時、「霊池」とも呼ばれ信仰を集めた浮布池である。
君がため浮沼(うきぬ)の池の菱(ひし)摘(つ)むと
わが染めし袖濡れにけるかも
(柿本人麻呂・万葉集)
浮布現象
浮布池の主だった大蛇が若者の姿に化け、麓に住む長者の娘と恋仲になったという説話もあり、けっきょく娘は大蛇とともに池の奥深くに入っていくが、その際に着ていた着物だけが水面に浮いてきたというのが「浮布」の由来ということである。
また、初夏の朝夕には、中の島から一ノ鳥居まで一直線に幅2mほどの白い帯状のものが湖面に現れる「浮布現象」とでもいう光景が現出することもあるということで、これが池名の由来とする異説もある。いずれにしても、いつか見てみたいものだ。
池落し、水留祭
万葉にも詠まれた浮布池。
誕生後、農業や生活の水源として、あるいは信仰の地として地域のおもしのような役割を担っていく。渇水のときには周辺の農民たちが手に手に鍬を携えて集まる「池落し」が行われ、逆に大雨がつづくと「水留祭」が行われてきた。池落しにおいて鍬を持って集まる意味は何だろう。雨を降らさなければ堤を壊すぞという脅し的な意味? 水留祭とともに興味深いところ。
池の流出口
池の流出口にはスライドゲートの水門が設けられている。
ボート遊びや釣りも。
浮布池には正面にあたる一ノ鳥居周辺に観光用ボートのりばがあるものの、駐車スペースが狭くボート利用者以外の駐車はちょっと微妙な感じ。池の西側に沿う狭い道を進むと展望所の駐車スペース(未舗装)あり。
池にはニジマス、フナ、ウナギが生息しており釣りもできるようだが、「鮎針等による引掛け釣禁止」との看板が。設置者は浮布池漁業組合。池の漁業組合とはちょっとめずらしいような。
三瓶山のビュースポットとして季節ごとの表情を見せてくれる浮布池。冬は氷結することも。
浮布池展望所
アプローチ路は舗装されているが狭い。駐車スペースは未舗装。
近くにある史跡「定めの松」
樹齢400年。市の天然記念物。
Googleマップ
マークした場所が展望所の駐車スペース。
写真アーカイブス
写真、鳥瞰図ともに2016年のもの。