水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

原尻の滝(大分県竹田)

はらじりのたき。

平野の中にぽっかりと穿たれたナイアガラのような滝。

日本の滝100選にも選ばれ「東洋のナイアガラ」として全国的に有名な水辺。特異なのはその立地。
民家と農地が川沿いに広がる田園地帯を走りながら、滝はすぐのはずなのに、こんなところに巨大な滝があるのか不審になってきます。目的の場所に着くと、ひろびろとした道の駅があり、クルマを停めて歩く。とつぜん平野が裁ち落とされたかのような断崖に囂々と水音をたてる瀑布に面食らいました。
幅120m、高さ20mというから立派なもの。
通常はあまり水量はないとのことですが、前夜から午前にかけてまとまった雨が降ったので、ナイアガラのミニチュアのような姿を見ることができて幸運でした。
さて、ここで見つけた禁止看板は「滝への飛び込み」。観光地になる前は地元の子どもたちの度胸試しの場で、その後もツアー客が行方不明になったりクルマの転落死亡事故があったり、人を吸い寄せる磁力があるようです。

滝の成因は、阿蘇山のカルデラ破局噴火。

原尻の滝の奇妙な地形。
成因は巨大地震による断層かと思いきや、そうではなく阿蘇山のカルデラ破局噴火による火砕流。溶岩流が冷えてヒビが入り、9万年間、水の浸食を受けてできた滝ということです。
いやちょっと待って。阿蘇山ってけっこう離れてなかった? 直線距離で35kmほどあります。これまでカルデラという言葉を軽々しく使っていましたが、人類がときどき遭遇する通常噴火の千倍ものパワーをもっている「破局的」な噴火様式のようです。
カルデラ破局噴火は、巨大隕石衝突を除けば、おそらくは人類にとって最恐最悪の災害でしょう。
半径数十〜二百キロの範囲で生存率ゼロパーセント。
数百度の高温が時速100キロを越えるスピードで襲いかかり、高さ500mの障壁をも乗り越え、昔ならば文明ひとつが一瞬で蒸発。現在なら地域圏がまるごと消失という感じでしょうか。阿蘇カルデラ破局噴火では火砕流が遠く山口にまで達したといい、衝撃を受けました。
もっとも気味が悪いのは、カルデラ破局噴火に関して人類は過去に経験はしているものの、記録が一切残っていないため、予兆も含め何も分からないということ。国内で分かっている直近のカルデラ噴火である鬼界カルデラ噴火では、九州、四国の縄文人は一度死滅し、千年ほどは無人だったというから、もはや恐ろしさを越えて第九「歓喜の歌」が聞こえてきそうです。
平均すると日本では6,000年に一度起こってきたカルデラ破局噴火。現在、最後の鬼界カルデラ噴火から7,300年たっています。


道の駅と案内板


マークした場所は道の駅。