水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

珠洲の野池(石川県珠洲)


絶滅危惧種のゲンゴロウを旗印に外来生物駆除を徹底。

能登半島最北部の珠洲市は三方を海に囲まれ、おもだった河川はないため古くから農業用のため池が造られ、たいせつに維持管理されてきた。
現在、珠洲にはため池台帳に登録されているだけで218個のため池(実数はもっと多い)と、寺家ダム、小屋ダム、岩坂ダムといった利水用の中型ダムがある。

上の写真の野池は、岩坂ダムの少し南にある野池のひとつ。名前も分からない小さな池ながら、珠洲の野池全体に共通する特徴をもっている。ゲンゴロウが描かれた珠洲独特の立入禁止・外来魚放流禁止看板だ。

農閑期となる秋から順ぐりに水抜きを行っているのも共通した特徴で、大きな河川がないことも関連して、特定外来生物の中でもブラックバスについては北部の寺家ダム、南部の小屋ダムをのぞいて駆除完了したというから環境意識の高さは並大抵ではない。日本海に大きく突き出した半島の先端、陸の孤島ともいえる立地から、この国古来の里山・里海の豊かさを保ってきたという誇りが垣間見える。
外来生物駆除のシンボルとなっているのが看板にあったゲンゴロウである。珠洲には日本固有種のシャープゲンゴロウモドキ、マルコガタノゲンゴロウといった絶滅危惧種が生息しており、特にアメリカザリガニによる食害が深刻だという。
シャープゲンゴロウモドキは遺伝的に関東型と関西型の二亜種に分類されている。ともに1930年から1960年にかけての生息確認を最後に久しく絶滅したと考えられていたものの、関東型が千葉県で1984年に再確認されたのを皮切りに、関西型も3年後に新潟県で生存確認された。現在、関東型は千葉県の二ヶ所で生息が確認。数少ない関西型の生息地の珠洲でも懸命の努力でアメリカザリガニの駆除によって保全がなされている。もはやブラックバスの駆除などという甘いレベルではなく、アメリカザリガニの完全駆除という針の穴を通すようなシビアな駆除活動が行われている最前線の地なのである。
とはいえ地球全体では一日におよそ100種の生物が絶滅しているのが実情である。

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掲載している珠洲の水辺

  • 亀ヶ谷池(石川県珠洲)野々江総合公園、道の駅が隣接。拠点に。
  • 蛸島大池(石川県珠洲)立入禁止看板あり。
  • 小屋ダム(石川県珠洲)駐車場、トイレあり。
  • 寺家ダム(石川県珠洲)
  • 岩坂ダム(石川県珠洲)
  • 若山ダム(石川県珠洲)古いアースダム。
  • 北方大池(石川県珠洲)立入禁止。
  • 猿ヶ谷池(石川県珠洲)立入禁止。2015年水抜き。
  • 雁の池(石川県珠洲)立入禁止。