水辺遍路

訪れた全国1万1,300の池やダムを独自の視点で紹介

鶴田沼(栃木県宇都宮)

鶴田沼緑地。つるたぬま。ひょうたん池。

地元グループの環境への取り組みは、知事表彰もされた。

地元の人が「宮環」と呼ぶ宇都宮環状線は高規格な四車線の幹線バイパスである。けっこうなスピードでひっきりなしにクルマが駆け抜けていく。速い流れの中、いったい何人の人が「鶴田沼緑地」と記された小さな看板に気づいただろう。
鶴田沼は宇都宮市内、しかも宮環そばという立地にありながら、長らく訪れる機会に恵まれなかった。いつも調査候補に挙がりながら、時間やルート設定の都合で訪れることができなかったり、あと100mという近くまで来ても、先に記したようなバイパス道路の構造でたどり着けなかったり。
だからこの日は鶴田沼を筆頭調査候補にし、交通量の少ない夜明け直前を狙って現場入りした。
バイパスから入る入口の狭いこと。まだあたりが暗かったこともあり、ハイエースだとちょっとためらってしまうほど。しかも直後の直角カーブはけっこうシビアだ。


※鶴田沼のカーナビ画面。「ひょうたん池」と記されている。

雑木林を抜けると視界がひらけ、念願の鶴田沼が飛びこんできた。鶴田沼は上下二段の池でこれは下沼。対岸に見える堤のむこうが上沼である。
下沼の岸には案内板もいくつか見られ、未舗装ながらけっこう広い駐車スペースと一般民家のような建物があり玄関には「鶴田沼自然の家」とある。
周辺の都市化に伴い農業用ため池としての役割を終えてから維持管理する人もいなくなり荒れ放題に。

1990年ごろには沼に入るのはブラックバス狙いの釣り人ぐらいで地元住民からも薄気味悪がられるような様相になっていたが、「鶴田沼の自然を育てる会」が発足し、地道なボランティア活動で沼の生態系を取りもどす努力がなされてきた結果、希少な生物が復活しはじめ、明るく開放的な水辺になった。この取り組みが県にもみとめられ、2014年には知事表彰もされている。

ハッチョウトンボ復活。

鶴田沼はバス釣り場としてブレイクした時期もあったが、ハッチョウトンボをはじめとする希少生物復活と保全のために、水抜きをはじめとする積極的な外来生物駆除が行われている。散歩しているおじさんに話をきいてみると毎年水抜きをしているというが、2013年秋に多数のブラックバス幼魚が確認されており、効果は未知数である。また、ふな、鯉などの魚影やもじり、泡づけなども確認できなかった。
明確な釣り禁止の表示はないものの、「沼に近づかないでください」の看板と、動植物採取の自粛を求める注意事項があることから、当ブログでは鶴田沼での釣りに関しては「非推奨」の立場をとりたい。


駐車スペースと自然の家。


案内板


マークした場所が駐車場。