水辺遍路

訪れた全国1万1,100の池やダムを独自の視点で紹介

ニテコ池(兵庫県西宮)


「火垂るの墓」の舞台といわれる池。

アニメ映画化もされた『火垂るの墓』は、戦火のもと身を寄せていた親戚のもとを離れ、子ども二人だけで生活をはじめた兄妹の悲話である。兄妹が自分たちだけの住み処として選んだ場所は池のほとりの防空壕だった。つかのまの幸せを象徴するかのように兄妹を包んで飛び交うホタル。この兄妹が住んだ場所のモデルといわれているのが、兵庫県西宮のニテコ池である。
満池谷という長い山裾の南斜面に位置し、現在は斎場と松下幸之助別邸跡のある閑静な住宅地に囲まれる。
上下三段の池になっており、上の池と中の池はコンクリートで護岸されたすり鉢状で調整池っぽい雰囲気。下の池のみ岸が草地になっており、火垂るの墓のイメージにかろうじて通じるものがあるが、残念ながらホタルが飛び交うような面影はない。釣り禁止。


中の池


上の池


下の池


「ねってとってこい」が転じてニテコ池に?

この奇妙な池の名前は、郷土資料によると「ネテトテコイ池」が変じたものと考えられている。西宮神社を建立する際にこの池の土を運びだしたが、そのときのかけ声が「ねってこい、ねってこい」で、これが転じて「ネテトテコイ」となったという説もある。


下の池と中の池を隔てる堤

悪霊の化身である巨大スッポンの伝説。

何かといわくの多い池である。かつて巨大スッポンが棲み、人々に害悪をなした伝説があるが、このスッポン、池が干上がったときに捕らえられ有料で見世物になったこともあるようである。心中の名所だったとのことで、それと大スッポンを結びつけて考えられていた。