八ッ場ダム（群馬県長野原）

【やんばだむ。八ッ場あがつま湖】

対岸の霧が晴れると、湖の上に丸岩が現れた。

完成まで70年。日本最後の巨大ダムプロジェクト？

2020年4月1日の竣工まで、紆余曲折、じつに70年もかかった国営の多目的ダム。この日はちょうど個人的にも50歳の誕生日という節目だったので、複雑な心境というか、ずっと忘れない日になりそうだ。
ダム建設をめぐって地元は真っ二つに割れ、国会の政争にもなったことで全国に名が知られるようになった。一度は政権の公約によって中止が決まったものの、その後、同じ政権によって中止が撤回されるという逆転劇も記憶に残る一因となった。

建設中の八ツ場ダム（2014年）

ダム湖に沈むのは、400年の伝統と奇祭の裸祭り

しかも、ダムの底に沈む川原湯温泉は厳冬に男たちが裸で湯をかけあう湯かけ祭りという奇祭が400年もつづいていた町。季節の風物詩としてメディアでとりあげられることも多かっただけに、400年もの伝統を湖底に沈めるダムの是非は実利を越えて感情的な部分も大きく揺さぶった。
旧来の町での祭りは2014年を最後に、翌年からは高台の代替地にて復活している。

このJR川原湯温泉駅も水没する（2014年撮影）

高台に新造された町と道の駅

ダム湖に沈んだ町は、湖をはさんで右岸と左岸に引き裂かれたため、三本の大橋が両岸を結んでいる。
今でこそ湖畔だが、もとは高台だった場所には足湯もある立派な道の駅ができていた。

道の駅にある絶景足湯。湖ごしに見えるのは、ラピュタ？？

ダム湖によって生まれた新「ラピュタ景」

山肌を覆い隠していた雲が流れ、片開きのレースのカーテンをゆっくり開けたかのように丸岩が正面に現れた。
目を疑った。アニメ映画で観たラピュタの封印が解けるシーンとそっくりだった。
それが対岸からも、三本の大橋からも、道の駅からもよく見える。
建設中のときも含めて何度かここには来ているのに、丸岩の奇景は一度も気づかなかった。
今まで湖底の立地からは角度的に見えにくかったのか、たまたま雲や霧で見えなかったのか、それとも人造湖と橋と高台の道ができたおかげで「封印」が解けたのか。いずれにしても、ここがラピュタ聖地になっていないのが不思議だが、目撃したタイミングが良かったのだろうか。

三本の大橋で空中湖上さんぽ

道の駅が大橋のたもとに立地しているので、対岸まで歩くと湖や丸岩の表情を楽しめる。
また対岸側には不動の滝もある。橋のおかげで、まるで空撮のようなアングルで見ることができる。

堰体側をのぞむ

上流側をのぞむ。手前の直立した岩もすごいが、奥に丸岩も見える

日本一高額なダム。おいくら？

もともとは事業費2,100億円の予定が、地元への補償などもろもろ積み上がって6,500億円に。東京オリンピックのメインスタジアムは1300億の予定が実際は2600億になって廃案になり設計コンペをやり直すという異例の事態・・というか、けっこう大人ってテキトーだなあと子どもに思われていないか心配である。

Google マップ

マークした場所は道の駅。