水辺遍路

実踏・日本の湖沼 7,200湖

明神池(静岡県沼津)

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知られざる絶景の里を守る池の神。

ここ井出之郷は、駿河湾に微塵の遠慮もなくせり出した奇形絶壁の山に両脇をはさまれた猫額の平地。この隠れ里の守り神のように、海からわずかに防風林をへだてて静かにたたずむ淡水の池は神秘というしかない。
2013年に初めて訪れたときから、とんでもないアウラをまとった池だとは思っていたが、NHK『21世紀に遺したい日本の風景ベスト100』のラストシーンを飾ったと現地の掲示板で知った。
それでも北にビジュアル的に分かりやすいミステリアス池である大瀬神池が控えているので、やや割を食っている感じがしないでもないが、それが「知られざる日本一の絶景」と地元が謳う井田の郷の「知られざる」部分を守ってきたのかもしれない。
晴れている日には駿河湾のむこうに富士をのぞみ、稲穂を潮風が洗う。


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谷地坊主の並ぶ海岸側の岸。


やっぱり謎すぎる神秘の池。でも実用的だったりする。

初訪の際はブラックバス釣りの人やトンボ獲りの人を見かけたが、訪れる人は多くはなく、ひっそりしている。というのも、井出は平地がとても狭い里で、県道からは狭隘な道でアプローチするしかない。途中、民家の塀が迫り、驚くほど狭い場所もある。また、土地が少ないせいか海岸沿いにある観光駐車場は有料。池畔もかろうじて一台ほどの駐車スペースしかない。
池をのぞきこむと、毎度、鯉は確認できるが他の魚はまだ見たことがない。案内板によると、モツゴ、ギンブナ、ソウギョ、ウナギ、ゴクラクハゼが生息しているとのこと。
釣り禁止看板は見ていないが、同名の池は山口県萩市、奈良県下北山村、茨城県土浦市にもあり、いずれも神系。山口の明神池は長門八不思議のひとつに数えられ、奈良の明神池も七不思議を持つ。いずれも釣りは御法度。釣りをした者が翌日重機にはさまれて死んだといった記載が役場のホームページにも見られるぐらいである。池にこの名前がつくのにはそれなりの理由があるはずなので注意した方がいいだろう。人界の釣り禁止では命まで取られることはないが、そうでない世界もあるかもしれない。
景観で特徴的なのは海側の岸を埋める異様な草の塊。驚いたことに、北国や標高の高い湿原などで見られる谷地坊主(やちぼうず)が、こんなところに!!
温暖な静岡県では唯一ということである。やはり謎すぎる!!
池から少し歩いた水田のかたわらに、その名も「池大明神」が祀られていた。沼津明神池にはどんな伝説があるのだろう。
集落へのアプローチ路は狭く、観光者用の駐車場は有料。お金をかけずにのんびり池参りをしたいなら、県道沿いの展望駐車場にクルマを停め、急斜面を下る遊歩道で池にアプローチする方法もある。

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あまりにも魅力的な明神池の周辺地形。


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両翼の山腹を走る県道から見た明神池。晴れていれば海の向こうに富士山も。
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河津桜と鯉の魚群。


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流れ込みの水路と水源の山。下は流入口。二ヶ所ある。もうひとつは流出口か。
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水上デッキ。


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池大明神。



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案内板。


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明神池のマップ案内板には、浮子桟橋側の池尻に排水処理場明神池農業用水ポンプ場が記載されています。これぞ池萌えポイント!
立地や形態から天然の海跡湖ではないかと思いましたが、なんと、ポンプを使って農業用水として役立てているようです。驚きました。
かなり立派な排水処理施設があるのも気になります。ポンプで農業用水として田に引き込まれた水や生活排水は、水路を通じて明神池に戻ってくるのかもしれません。
高潮などで海水が混じったら農作物アウトになりそうですが、近くの大瀬神池が科学の常識を越えて淡水を維持していることを考えると、ここも同じなのかもしれませんね。それにしても農業用の溜め池として利用されている池としては、私の知る限り、日本一、海に近いかもしれません。

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手前の流入口には水門の操作ハンドルも見える。奥の建物は排水処理場。


マークした場所は明神池を見下ろせる無料駐車場。



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2013年夏撮影。